【フレイル治療と漢方/札幌】病院でフレイルと診断されたら

「なんとなく、やる気が出ない」
「体重が減って疲れやすくなった」
「家族の歩くペースについていくのが大変になってきた」

これらの症状のうち、当てはまるものはありますか?
実はこれ、様々な病気になりやすい状態である「フレイル」の兆候の一部です。

今回は、コロナ禍で注目が更に高まった健康概念「フレイル」と、その治療法について東洋医学・西洋医学の観点から解説します。

聞いたことはあるけれど……フレイルって、どういう状態?

「フレイル」という言葉を聞いたことはありますか?日本語では「虚弱・脆弱・衰弱」などと訳される健康に関する概念です。簡単にいうと「健康と要介護状態の間の期間」を指します。体重減少や歩行速度の低下という身体面だけでなく、「気力が出ない」というような精神面、そして「人との集まりに出かけるのが億劫」というような社会的な側面も含めて、衰えていないかチェックします。

人間は誰しも老化し、心身の機能は自然と低下していきますが、そのペースは人によって異なることも事実です。フレイルに関する知識を身に付けること、そして兆候に気づいたら早期に対応することで、要介護状態に移行するのを防ぎ、健康寿命を延ばすことができます。

あなたもフレイル予備軍?!高齢者以外でも気を付けたい

フレイルは、新型コロナウイルス感染症を機に広く知れ渡ることになりました。
感染予防のために外出を控えたことで活動量が減り、筋力や認知機能の低下が進行した高齢者の実態が明らかになったのです。

これと同様に、夏場に熱中症予防のため外出を控えることや、冬に寒さのため室内でじっとしがちになることもフレイルを加速させる要因となります。加えて冷房の使用は、身体を冷やし気血の巡りを滞らせてしまいます。また、冷たい食べ物や飲み物を取り過ぎることも、胃腸の消化吸収機能を減弱させるため健康を損ないやすくなります。だからこそ高齢者はもちろん、他の年代においても季節を問わず身体を労わることが重要なのです。

フレイルかもしれない!病院を受診すれば治療は受けられる?

ところで、あなたの周りにはフレイルを自覚して病院を受診した人はいますか?あるいは、もしあなた自身がフレイルを疑ったら、どの程度の症状で受診を検討するでしょうか?おそらく悩む人が多いのではないでしょうか。

一方、フレイルの患者を診察する医師も、診断に苦慮することがあるのです。なぜかというと、前述のようにフレイルは、病名ではなく老化に伴う兆候を指す概念だからです。

西洋医学では、高血圧の患者に降圧剤を処方するように、病名があってこそ薬を処方するなど治療が可能になります。そのため、採血をはじめとする検査で明らかな異常が認められないと、医師は病名がつけられず治療することは難しくなります。このような背景から、フレイルの症状が「不定愁訴」と捉えられ、薬が処方されず生活指導のみ行われたりする場合があるのです。これではなかなか解決につながりません。

東洋医学で考えるフレイルとは

先に述べたように、フレイルは心身の働きが衰えていく状態です。漢方では、この衰えの状態(老化)を臓腑機能の低下と考えます。臓腑を働かせるエネルギーを「気」といいますが、この気が加齢により十分でなくなるため臓腑の働きも悪くなり、心身の衰えにつながるのです。足りなくなった気は食事で補うことが大切です。しかし胃腸の働きも落ちているので、そもそも食べられる量が少なかったり、栄養を消化・吸収できなかったりして、臓腑が順調に働ける程の気を補うことは難しくなっています。

フレイル治療で注目された漢方薬がある

実はフレイルの治療薬として、処方が急増している「人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)」という漢方薬があります。「気血を補う」つまり「元気を出させる」働きのある漢方薬で、元気のないフレイルかもしれない人や様々な疾患に伴う疲労や食欲不振のある人に用いられてきました。実際にこの漢方薬を処方している医師たちにアンケートをとった結果があるのですが、中には「最後の頼みの綱として処方している」とか「飲みやすいので効いてくれたらもうけもの」といった程度の認識で処方されていることもあるようです。

確かに、人参養栄湯はそのような人たちに効果を発揮することもあるかもしれません。エネルギーを補う薬なのでなにかしら効果を感じることもあるかもしれません。しかしこれは、これは本来の漢方薬の使い方とは全く違います。

漢方薬を処方する際に、「弁証論治(べんしょうろんち)」という東洋医学の大切な考え方があります。東洋医学では、西洋医学のように病名に対してこの薬と決まっているわけではなく、そのときの患者の症状や体質、生活環境、嗜好などを問診して状態を判断し、漢方薬を選びます。そのため、病名がつかなくても漢方薬を使うことができるのです。

またこのような理由から、同じ「フレイル」の状態だとしても一律に人参養栄湯が処方されることは本来ありません。一人ひとりに合ったものということになると、当然人によって異なる漢方薬を使うことになりますし、それが漢方薬を使うに当たっては重要で、これが東洋医学は「オーダーメイド医療」といわれる所以です。そしてそのような処方を行っている病院や薬局を見つけることが、フレイルの予防や改善の近道になります。

フレイル予防・治療に漢方薬を取り入れてみたい!

この記事を読んで「漢方薬を使いたい!」と思い、ドラッグストアに足を運ぶ方がいるかもしれません。しかし、安易に漢方薬を購入・服用することは健康を損なうリスクがあることを念頭に置いてください。なぜかというと、万が一、体質に合わない漢方薬を服用してしまうと、薬効が得られないばかりか健康を害してしまう危険性があるからです。だからこそ、専門的な知識と経験を身に付けた医師や薬剤師に相談した上で、慎重に取り入れる必要があります。

フレイル治療における、漢方治療の魅力とは?

東洋医学では、人間が病気や老いを経験するなかで得た知識や知恵を、世代を越えて引き継ぎ体系化してきました。「やる気が出ない」「疲れやすくなった」というフレイルの症状は、時代の変化により突然出現したのではなく、昔から変わらず人間が生きるなかで経験してきたものです。そのためフレイルのような概念はまさに漢方の得意分野で、フレイルの予防や治療の効果が期待できるのです。

もし、あなたも「フレイルと診断された」とか「もしかすると、フレイルかもしれない」と感じているのであれば、「転ばぬ先の杖」として漢方薬を生活に取り入れることを考えてみてはいかがでしょうか。まずは、かかりつけ医・かかりつけ薬局に相談してみましょう。

「これまで大きな病気をしたことがないため、かかりつけ医はいない」という方や「調べてみたけれど、近所には漢方薬を提供してくれる病院・クリニックがあるか分からない」という場合も、私たち漢方専門なつめ薬局に、お気軽にご相談下さい。対面でのご相談はもちろん、遠方にお住まいの方に対しては、電話やZOOM・LINEを活用してのご相談にも対応しております。早めの対策がより健康な未来を作ります。少しでも気になることがあればぜひご相談くださいね。

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