今年も夏が近づき、朝を迎える時間が気持ちの良い季節になりました。早起きをして朝活を楽しむ方もおられるでしょう。
一方で、からだのエンジンがかかってくるのは夕方から、夜になると目が冴え、眠りにつくのはいつも深夜という「夜型人間」という方も多いのではないでしょうか。
生活リズムを整えることは大切だとなんとなく認識しつつも、なかなか実行できないのが現実です。日頃からだの不調を感じている方、もしかするとその不調は夜型の生活のせいかも知れません。
今回は夜型の生活や生活習慣が健康に与える影響と、その改善に漢方薬が有効であることについてご紹介します。
不調の理由は生活リズムにあり
生活リズムを決めるクロノタイプ
あなたは、早寝早起きで午前中から活動的である「朝型」なのか、遅寝遅起きになりやすく午後から活動的になる「夜型」なのか、どちらでしょうか。
体内時計が刻むリズムには個人差があり、このパターンのことを「クロノタイプ」と呼んでいます。タイプの決定には遺伝子が関わっているといわれており、自分ではどうすることもできません。
朝型の人は成人の約4割、夜型の人は約3割、中間型は約3割とされていますが、現代においては学校や会社といった社会全体が朝型の人に合わせて動いています。自分の活動時間と社会の時間が合わない夜型の人にとって、現代社会は十分なパフォーマンスを発揮しにくい環境といえるでしょう。
夜型の人は朝型の人より短命となる可能性が
フィンランドで行われた37年に及ぶ調査では、夜型であると回答したグループの死亡率が朝型グループに比べ9%高いことが分かりました。そしてその原因として飲酒と喫煙が関与していると発表されました(2023)。
夜型の生活そのものが寿命に関わるというより、夜型の生活を送ることでアルコールと煙草の摂取量が増え、それが寿命を縮めるということが示唆されたのです。
夜型の生活を送る人は、そもそも活動時間帯が社会と合わないことに加え、飲酒や喫煙といった健康を害する生活習慣が増えることで、からだの不調がより現れやすくなるのかもしれません。
生活リズムを朝型に変えるには
夜型の生活を送ることが健康を害し、寿命を縮める可能性があることが分かりました。
現代社会を生きる上で、朝型の生活にシフトすることが1日を効率よく過ごすことができ、何よりも健康への近道となるかもしれません。しかし、先に述べたようにクロノタイプは遺伝子によって決められており、いきなり修正することは難しそうです。
朝型生活への切り替え方としては、朝日をたっぷり浴びる、夜をダラダラと過ごさない、朝起きたら何をしよう?と楽しみをつくる、といった方法があります。
漢方薬で整えるからだのリズム
からだをリセットする東洋医学の考え
中国古来の医学では自然のリズムに沿った生活が健康につながるとされ、様々な知恵が説かれてきました。
その中に「子午流注(しごるちゅう)」という考え方があります。
「子午」は時刻、「流注」は体内の血液や気(エネルギー)、水分が各臓腑に注がれるという意味があります。時間帯によってよく働く臓腑があり、それに合った生活を送ることで不調の予防と改善に役立つというものです。
24時間を2時間ごとに12等分し、それぞれの時間帯に活発に働くとされる臓腑を示しています。
・1~3時 肝
全身の血が肝に集中します。この時間に熟睡することで肝の解毒と修復機能が良好に発揮され、新鮮な血を産生することができます。
・3~5時 肺
肺に新鮮な朝の空気を取り入れ、新鮮な血を全身に供給します。
・5~7時 大腸
水分の吸収や排便に適した時間です。寝起きに白湯を一口飲んだり朝食をしっかり摂ったりして大腸を刺激し、すっきりとしたお通じを促しましょう。
・7~9時 胃
胃をはじめとする消化器系が活発になる時間です。温かいお茶やスープなど、内臓を温めるものを摂りましょう。
・9~11時 脾
消化、吸収の働きをする脾が活発になり全身に気血を巡らせます。脳への気血も最も養われる時間であり、仕事や勉強などに集中できます。
・11~13時 心
全身に血液を循環させ、精神活動も担う心の働きが高まります。短い昼寝を取り入れるなどできるだけ心も体もリラックスすることで午後からの活力につながります。
・13~15時 小腸
午前中に摂取した栄養が小腸で取り込まれます。適度に水分を摂り、栄養の流れをスムーズにさせましょう。
・15~17時 膀胱
一日のうちで最も体温が高くなります。この時間は膀胱がよく働くため、トイレは我慢せず排泄により籠った熱を逃します。
・17~19時 腎
生命力を司る腎がよく働く時間です。できるだけこの時間に夕食を摂り、精力を効率よく蓄えることで健康に導きます。
・19~21時 心包
心包とは精神面を担う心を包んで守る膜を指します。この時間はゆっくりと入浴するなど、リラックスすることを心掛けましょう。
・21~23時 三焦
三焦とは気や水の通路で東洋医学特有の臓腑です。気や水の流れが滞ると様々な不調を生じるため、心包の時間と同様リラックスして過ごし、就寝の準備をします。
・23~1時 胆
胆嚢が良き働き胆汁が生成されるため、この時間に起きていると胆石などの病気にかかりやすくなります。睡眠が最も深くなり、体を修復する成長ホルモンが多く分泌されこの時間にぐっすり寝ることが翌日の活動の源となります。また胆は決断力を司っており、胆の働きが低下すると決断力や判断能力を失いやすくなります。
以上のように、東洋医学では何時間寝るというよりも、何時に寝るかを重要視しています。23時には寝て7時頃まで睡眠を取ると、摂取した栄養が効率よく消化吸収され、エネルギーとして翌日の活力につながるとされているのです。
ついついスマホを見たりお酒を飲んだりしてしまいがちな夜型の人は、子午流注をちょっとだけ意識して生活を送ってみてはいかがでしょうか。
夜型がもたらす不調を漢方薬で改善
子午流注を意識して生活をすることが健康への一歩となります。しかし遺伝子によって定められた夜型の生活リズムはそう簡単に変えることはできません。そこで、漢方薬でサポートし、生活リズムを整えていくとより一層効果的です。
夜型人間のタイプ別に漢方薬がどのように作用するのか見ていきましょう。
・心火旺タイプ
夜になっても眠気を感じず、なかなか寝付けないタイプです。考え事や心配事が多く、精神面を担う心の働きが亢進している状態です。
心の過剰な働きを鎮める清心瀉火(せいしんしゃか)作用のある漢方薬を服用し、精神面を落ち着かせ入眠しやすくします。
・心陰虚、心血虚タイプ
寝つきはよく一旦は眠れるものの何度も目が覚めてしまいます。また夢をよく見て寝ても寝た気がしない、疲れが取れないタイプです。血や体液が不足しており、心の働きが低下し不安感が取れません。
血や水を補う補血剤や滋陰安神剤を用いた治療を行います。心の働きが向上することで精神面が安定し、熟睡できるようになります。
・脾胃気虚タイプ
朝起きられない、眩暈や倦怠感がひどく朝食が食べられないなどという、いわゆる「朝が苦手」タイプです。消化吸収の役割を担う脾の働きが低下し、食物から作られた栄養を全身に送り出せず脾に溜まってしまっている状態です。食欲がなく、栄養が全身に行き渡らないため頭が回らず倦怠感が強く現れます。
脾の働きを高める健脾作用のある漢方薬、余分な水分を除去する利水作用のある漢方薬を用いて治療をします。脾の状態が改善すると栄養が十分に全身をめぐり、朝スッキリと目を覚ますことができます。
漢方薬は西洋医学で用いられる睡眠薬とは違い、強制的に睡眠に誘導するような作用はありません。
まずは不眠や目覚めの悪さの原因をしっかりと見つけます。そしてからだの内側から問題を解消することで、より自然なかたちで生活リズムを作り上げていくのです。
漢方薬によるサポートで夜型人間を脱することができれば、体力や思考力が改善されます。特に働き盛りの年代の方は日中のパフォーマンスが向上し、仕事や私生活が充実します。また煙草や飲酒の機会も減少し、より健康に近づくことができるでしょう。
煎じの漢方薬で夜型人間を卒業しましょう
夜型人間を脱するためには、子午流注を意識した生活に加えて漢方薬でサポートすることが有効であることをお伝えしてきました。
漢方薬を服用したことがなく、どのように購入したら良いのか迷われる方もおられるでしょう。
漢方薬は病院の処方やドラッグストアでも購入することができますが、顆粒タイプのエキス製剤である場合がほとんどです。漢方エキス製剤はいわばインスタント製品であり、製造過程で有効成分が減少してしまいます。
せっかく漢方薬を服用するのであれば、ぜひ煎じの漢方薬を試してみてください。煎じの漢方薬は生薬そのものを煮出して作られており、有効成分を最大限引き出すことができます。同じ漢方薬でも漢方エキス製剤と比べ効果を一段と感じることができるでしょう。
まずは自宅の近くの漢方専門薬局で煎じの漢方薬が処方できるか相談してみましょう。
もしそのような薬局が見つからない時は、私たち「漢方専門なつめ薬局」へご相談ください。来局が難しい方は電話やオンラインでの遠隔相談も行っております。
完全予約制になっており、ゆっくりとご相談していただけます。
漢方薬で夜型人間を卒業し、健康的な生活リズムを取り戻しましょう。