【不眠治療と漢方/札幌】冬になると「眠れない」のはなぜ?

東洋医学のバイブル『黄帝内経』によると、季節に合わせて過ごすことが健康によいとされていて、四季の睡眠について以下のように書かれています。

春夏は「少し早く起きて、少し遅く寝るのがよい」
秋は「早寝早起きするのがよい」
冬は「少し早く眠り、少し遅く起きるのがよい」

東洋医学には「人は宇宙や自然から影響を受ける存在であり、すべてのものが互いに影響しあって生命を営んでいる」という「整体観念」があります。したがって四季の気候のリズムに従い生活することは、健康を維持し病気を予防することにもつながります。

『黄帝内経』では冬の過ごし方を、「冬は万物が籠ってしまう時期なので、人も動き回って陽気をかき乱してはならない」「寒さを避け暖かくし、汗をかいて体内の陽気を逃がすことがないようにしなければならない」としています。

冬の睡眠については、「少し早く眠り少し遅く起きるべきであり、起床と就寝の時間は日の出と日の入りを基準にするのがよい」と述べています。これは冬の間にできるだけ日光を浴びて陽気を蓄えることが、来る春を元気に過ごすための養生となるからです。

ワシントン大学の学生を対象にした睡眠の研究では、夏の方が冬より早く就寝するという結果が報告されています。研究者は夏に早く就寝する理由を「日中、特に朝に光を浴びると、夕方に疲れを感じる時間も早くなる」からではないかと説明しています。

これは『黄帝内経』の内容と通じるところがあり、冬は日の光をできるだけ浴び、しっかりと睡眠を取ることがいかに大切かわかります。

それでは一体、どういう理由で冬になると「眠れない」状態になるのでしょうか。東洋医学の視点で考えてみましょう。

原因1:秋冬の乾燥による熱の発生

秋は乾燥の季節です。肌が乾燥するだけでなく、中国では「秋はお腹が乾燥する」といわれています。お腹の乾燥とは便秘の隠語で、秋は胃腸も乾燥する季節なのです。

続く冬は暖房器具で室内を温めるので、秋からの乾燥が一層すすみます。すると肌や胃腸だけでなく、血液や体内の他の水分も少なくなります。これを「陰血不足(いんけつぶそく)」といいます。

東洋医学で「血」は酸素や栄養を運ぶだけでなく、精神に必要な要素も運んでいると考えられています。したがって「血」が不足すると精神面のバランスをくずし、思い悩むことがふえ、夜に色々考えてしまい眠れなくなるのです。

「血」の不足がすすむと「陰虚(いんきょ)」になります。東洋医学で「陰」は体内の水分を指し、「陰」と「陽」でバランスを取っています。「陰」が大量に不足すると、いままでバランスを取って同じレベルだった「陽」が相対的に優勢になります。「陽」は熱エネルギーですが、この場合は温かいから「陽」が増えたわけではなく、「陰」が不足したから「陽」が相対的に多い状態になっただけなのです。この熱が余った状態を「虚熱(きょねつ)」と呼びます。

「虚熱」の状態では、運動しているわけでも気温が高いわけでもないのに、体内に熱が発生しています。そのため寝ている時に、手のひらや足の裏、胸のあたりが火照ることがあります。「虚熱」により体内がより乾燥して寝汗をかいたり、「虚熱」が頭に向かうので夜中に目が覚めたり夢をみたりします。つまり虚熱が発生しやすい冬は、長時間横になっていても眠りの質が悪くなりやすいのです。

乾燥対策としては、加湿器を使い室内の湿度を維持するとともに、秋の間に身体を潤す食材を摂取して冬に備えるのが有効です。秋は「肺」の季節なので肺を潤す梨や百合根などで冬になる前に潤いを補っておきましょう。

気温が下がってくると辛い物を食べて体を温めたいところです。ですが、辛いものを食べ過ぎると汗をかき余計に乾燥してしまうので、食べ過ぎには注意が必要です。

秋冬の体内の乾燥が食べ物で対処できない場合は、漢方薬で補うのも効果的です。

原因2:冬の本格的な寒さが陰陽の根本的なバランスを崩す

東洋医学で冬は「寒」の時期であり、五臓は「腎」の季節になります。「腎」は東洋医学では尿を作るだけでなく、成長・生殖・老化に関わる命の根源のような臓腑なのです。

「腎」には、身体全体を温める「腎陽(じんよう)」と、身体全体を潤す「腎陰(じんいん)」があります。冬になると「腎陽」が弱くなり身体が冷えます。冬に足腰が冷えるのはそのためです。「腎」は「腎陽」と「腎陰」のどちらかが減少すると、もう一方も減少するという特徴があります。片方のレベル低下が「腎」全体のレベル低下になってしまうのです。

本来人は眠るとき、「陽」が体内の深いところに納められることで深い眠りにつけます。しかし「腎」のレベル低下が悪化すると、「腎」の陰陽はバランスを失い、お互いを引き留めておくことができません。そして「腎陽」が夜に体内の深い部分から頭にふわふわとのぼってしまい、睡眠が浅くなり夜に目が覚めやすくなります。

『黄帝内経』で冬は「少し早く眠り、少し遅く起きるのがよい」といっているのは、寒いから体力を温存しろということだけではなく、冬は眠りの質が悪くなるので時間で質を補うこともいっているのかもしれません。

冬の養生には、黒豆、昆布、牡蠣など「腎」を補う食材や、羊、くるみ、ニラなど身体を温める食べ物を取りましょう。秋と同じく身体を潤す食材を使うことも重要です。

漢方薬には「腎」自体を補うもの、「腎陽」を補うもの、「腎陰」を補うものなどがあります。腎の回復には時間がかかるので、漢方薬の力を借りて早めに対処していくのもよい方法です。

まだある!冬の「眠れない」に漢方薬を使うメリット

今回は冬の眠れない理由を、東洋医学の考え方から解説しました。
漢方薬を使うと眠れない状態を改善するだけでなく、体にとってさらによいことがあります。

乾燥が原因で眠れない人が漢方薬を使うと、快眠以外のメリットとして、肌の乾燥が改善されたり、胃腸が潤い便秘が改善したり、風邪をひきにくくなったりします。

寒さが原因で眠れない人が漢方薬でよく眠れるようになると、身体の冷えがなくなり足腰の痛みが和らぎます。

自分に合う漢方薬を使うことは、眠りの質をあげるだけでなく体質の改善にもなります。体質改善によりその他の不調も良くなり、日々の生活が快適になるというメリットがあるのです。

漢方薬で冬の睡眠に関する悩みを解決したい

漢方薬は自分の状態にあったものを選ばなくてはなりません。冬の睡眠に関する悩みには乾燥と寒さが関わっています。原因や体質によって使う漢方薬が違うので、どの漢方薬を使うかを判断するには、漢方相談による丁寧な問診が必要になります。

まずはご近所でしっかり話しを聞いてくれるクリニックや薬局を探し、専門家に適切な漢方薬を選んでもらいましょう。ご近所にそのようなところが無い場合には、私たち漢方専門なつめ薬局では電話やズーム、ラインを活用したビデオ通話でのリモート相談を承っていますので、ぜひご活用ください。

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