がんの治療は身体的な面だけでなく、心理的な面にも大きな影響を及ぼします。
がんと診断されることで自身の健康状態や未来に対して不安を抱き、病気への対処能力が低下し生活の質を悪化させることもあります。
治療中の身体的な副作用や苦痛も不安を増幅させる要素となるでしょう。
不安や心配、身体的な不快感によって睡眠の質が低下し、がん治療に伴う薬剤の副作用や身体的な苦痛で眠れなくなることもあります。
睡眠の欠如は回復力を低下させ、免疫機能を損なう可能性があり、治療や回復の妨げとなることもあります。
西洋医学では、がん患者の不安や不眠に対して、抗不安薬や抗うつ薬、精神安定剤などさまざまなアプローチが取られています。リラクゼーション法や瞑想、ヨガなどのストレス軽減方法が取り入れられることもあります。
それでも不安や不眠が解消されない場合には、根本的な原因を考えてアプローチする東洋医学の漢方薬という選択肢があります。
東洋医学では何が原因となって不安や不眠になっているのかを突き止め、適切な漢方薬で原因から改善していきます。
今回は、「東洋医学で考えるとがんによる不安や不眠にはどのような原因があるのか」についてお話します。
がんで不安をかかえ眠れなくなる東洋医学的な理由とは?
がんと告知されたり、手術をしたり、闘病生活をしたら、不安をかかえ不眠になるのは当然でしょうか?
同じがんの患者さんでも、不安や不眠にあまり悩まされない人がいるのはなぜでしょうか?
東洋医学で不安や不眠は、「元気な血」が足りなくなることが原因で起ると考えられています。
「元気な血」とは、エネルギーである「気」と、栄養と酸素たっぷりの「血」のことです。
この「元気な血」が精神的な安定を支えています。「元気な血」が不足すると精神的に不安定になり、不安が強くなり不眠があらわれるのです。
がんの患者さんでも不安や不眠に悩まされない人は、手術や治療の後、順調に体調が回復し「元気な血」をたっぷりと作れ、それがスムーズに体内を流れています。
反対にそれらの症状が現れる人は、手術や治療の後、なかなか体調が回復せず「元気な血」を作れない、もしくは「元気な血」を作れていてもスムーズに流れていません。
胃腸が弱り血やエネルギーが不足することで不安・不眠になる場合【気血両虚タイプ】
がんの告知を受けてから食事が喉を通らなくなった、抗ガン剤治療で胃腸が荒れて食べたものを吐いたり下痢をするようになったりする、手術は上手くいったのにいつまでも食欲がなく体力が回復しない…
このような方は「元気な血」を作る工場である胃腸が弱いので、「元気な血」を作れなくなっています。
「気」はエネルギーで、「血」はエネルギーを運搬するトラックともいえます。
「元気な血」は「気」を載せたトラックのイメージです。
工場である胃腸が稼働しないので商品不足になり出荷できない状態になっています。
つまり、なかなか体調が回復せず「元気な血」を作れないのです。
これを東洋医学では気血両虚(きけつりょうきょ)や心脾両虚(しんぴりょうきょ)といいます。
気血両虚は「元気な血」が足りていない状態という意味です。
心脾両虚は、胃腸の工場長である「脾」が弱って「元気な血」が作れないので、精神をコントロールしている「心」に「元気な血」を送れず、脾と心が仕事ができない状態です。
気血両虚や心脾両虚の場合は、「元気な血」を作れる身体にするための漢方薬を使い、身体を正常な状態に戻すことで不安や不眠を改善していきます。
ストレスで気が滞ることが原因で不安・不眠になる場合【肝気鬱滞タイプ】
先ほど胃腸は「元気な血」をつくる工場であるといいました。
今度は胃腸は弱っていない、つまり工場の設備も人員も原材料もそろっているのに、発電用のガソリンが各所に届かなくて機械が動かない状態を考えます。
この場合の「元気な血」は、発電用のガソリンが「気」で、ガソリンを運ぶトラックが「血」になります。
出荷用トラックとは別の荷物を運んでいるのです。
「元気な血」は「元気な血」の出荷トラックだけでなく、発電用のガソリンが積まれたトラックもあるのです。
ガソリンを積んだトラックが交通渋滞に引っ掛かっている状態を、東洋医学では「気が滞る」と考え、気滞(きたい)もしくは肝鬱気滞(かんうつきたい)と呼びます。
トラックをスムーズに走らせるために交通整理をする信号が必要です。
東洋医学で信号をコントロールするのが五臓六腑の「肝」です。
「肝」はストレスを受けるとコントロールが不安定になる性質があり、コントロールが不安定になると信号が狂って交通渋滞になってしまうのです。
交通渋滞が原因で、ガソリンを積んだ「元気な血」トラックが工場である胃腸に届かないと、ガソリン不足となり工場で栄養が作れません。
この場合は気血両虚や心脾両虚の漢方薬を使っても問題は解決しないので、「肝」のはたらきをスムーズにする漢方薬が必要なのです。
ストレスに熱が加わることが原因で不安・不眠になる場合【肝火上炎タイプ】
「元気な血」トラックの交通渋滞が長時間続くと、積んでいるガソリンが燃えて火事になることがあります。
気が滞り「元気な血」が溜まりすぎるとストレスで引火して燃えるのですが、それを肝火上炎(かんかじょうえん)と呼びます。
燃えると熱いですし、熱いものは上の方にのぼる性質があります。
上の方、つまり頭が熱い状態が続き、夜になっても頭が熱いので眠れなくなるのです。
先ほど、交通渋滞が原因で「元気な血」が停滞しているときは、信号機を正常にする漢方薬を使うといいましたが、燃えている場合は消防車が必要となるのでまた別の漢方薬を使わなくてはいけません。
長く患い、体内が乾燥することが原因で不安・不眠になる場合【陰虚火旺タイプ】
もうひとつ別の理由で、身体の中が火事になることがあります。
がんの手術で大量に血が失われたり、胃腸が弱って「元気な血」が作れず、長い間不足したりすると身体の中が乾燥します。
例えば、冬に空気が異常に乾燥すると乾燥注意報が出ることがあります。
この時、火の取り扱いに注意しないと火事になってしまいます。
人間の身体も同様で、長期に渡って体内が乾燥すると火事になりやすくなります。
この状態を陰虚火旺(いんきょかおう)と呼びます。
乾燥からおこった火事も熱は頭にのぼり、夜も頭が熱いので眠れません。
先述した肝火上炎タイプの火事とは発生の原因が違うので、使う漢方薬が変わってきます。
漢方薬によって不安や不眠が解消されるとどうなるのか
適切な漢方薬を使い不安や不眠が解消されると、「元気な血」のエネルギーである「気」がパワーアップします。
「気」のエネルギーには免疫力も含まれているので、「気」がパワーアップするということは、免疫力もあがるということです。
回り回ってがんが再発しにくい身体になるのです。
また不安や不眠が解消され身体の中に良い循環ができると、血行が良くなるので顔色も明るくなり肌や髪に艶が戻ります。
精神的にも安定するので、趣味を楽しむ心のゆとりが生まれますし、人間関係にも余裕が生まれます。
漢方薬の最大の利点である「身体を正しい状態にする」という働きは、不安や不眠の解消だけにとどまらず、根本的に体調を整えることができるのです。
がんの不安や不眠のケアに漢方薬を試したい場合はどうすればいいのか?
根本的に体のバランスを整えるのが漢方薬ですが、そのためには自分の今の状態にあったものを選ばなくてはなりません。
同じがんによる不安や不眠でも、原因によって使う漢方薬が違います。
胃腸を元気にするのか、渋滞を緩和するのか、火事を消すのか、乾燥を改善するのか、それとも他の原因があるのか。
特にがんの場合は、原因がひとつでなく複数が絡み合っていることも多いので、それを解きほぐして原因がなにかを探り当てる必要があります。
原因が複数ある場合は複数の漢方薬を用いる必要もありますし、どの順番でどの漢方薬を使うのかも重要になってきます。
それらを判断するには、丁寧な問診(カウンセリング・漢方相談)が必要になります。
まずはご近所でしっかり話しを聞いてくれるクリニック・薬局を探し、専門家に適切な漢方薬を選んでもらいましょう。
ご近所にそのようなところが無い場合には、私たち漢方専門なつめ薬局ではZOOMやLINEを活用したビデオ通話でリモート相談を承っています。
私たちは、患者さん一人ひとりに合った漢方薬を、厳選した生薬で自社製造してご提供しています。
なつめ薬局で自社製造する漢方薬は煎じタイプです。顆粒や錠剤・シロップタイプの漢方薬と比べると、同じ名称の漢方薬でも効果がしっかりしているのが特徴です。
ご相談は完全予約制になっており大変混雑していますので、漢方治療を早く始めたい方は、お早めのご連絡をお勧めいたします。
ご連絡は、下記リンク先から行えます。