漢方を使って一人ひとりの体質に応じたうつ病 ・ うつ症状の治療を

一日中気分が落ち込んで何をしても楽しく感じないなどの精神的な症状に加えて、眠れない、食欲がない、疲れやすいなど体の症状にも悩まされていないでしょうか。

こういった症状が続いている場合、うつ病の可能性があります。

現在ではうつ病は日本人の13人に1人が生涯に一度はかかるといわれており、その数は増加の一途をたどっています。

メンタルの病気は、西洋薬による薬物療法やカウンセリングなどを中心に治療が進められていくことが多いのですが、漢方も治療の選択肢のひとつです。

しかし、西洋医学の病院で処方される漢方と、東洋医学の理論で処方される漢方では異なる点があります。

どのような場合に漢方が役立つのか、また東洋医学からみたうつ病 のからだがどうなっているのか、そして漢方の本来の使い方をみていきましょう。

東洋医学とうつ病

西洋医学で、うつ病は脳の働きに何らかの異常が起こりさまざまな症状が出る病気とされています。
うつ病になりやすい遺伝的な性質があり、それにストレスなど何かのきっかけが加わって発症すると考えられているのです。

多くの場合、脳の働きに関係する物質に直接働きかける抗うつ薬などの向精神薬が処方されます。
また睡眠に問題がある場合は、睡眠導入剤など対症療法の薬が出されます。

西洋医学では、表に現れている症状や検査結果をもとに病名がつけられて、それをもとに薬が処方されます。
漢方も例外ではありません。

一方、東洋医学では、脳だけに注目することはありません。
東洋医学には心身一如という言葉があります。
心身一如とは、心と体は別物ではなく、お互いに強い影響を与え合っているという考えです。

そのため、気分の落ち込みなどメンタルの症状が中心のうつ病も、からだ全体の機能を回復させることで治癒に導くことを目指します。

漢方では、人の体は「気・血・水」という3つの要素で成り立っていると考えられています。
気・血・水の3つがバランスよく機能していれば、心身ともに健康な状態です。

しかし、どれか一つでも不足したり循環が悪くなったりすると、体調不良や病気の原因となってしまいます。

詳しくは後から述べますが、うつ病は、主に気や血に問題があることが多いのです。

東洋医学では、症状や検査結果から西洋医学のような病名をつけて漢方を出すわけではありません。
患者さん一人ひとりのからだの状態を東洋医学独特の理論で分類して、それに基づき漢方を処方します。

そのため、西洋医学の病院で同じ病名がついたとしても、他のうつ病患者さんと同じ処方がされるわけではないのです。

うつ病治療における漢方

うつ病の症状には、イライラする、気分が落ち込む、意欲がわかないなどといった精神的な症状と、睡眠障害、体のだるさ、食欲不振などの身体的な症状があります。

頭痛やめまい、のどの違和感、吐き気、肩こり、便秘、関節痛などの自律神経の乱れによる症状に悩まされる人も少なくありません。

症状が軽い場合は、漢方のみで治療することも可能です(ただし、現在西洋薬を使って治療をしている方は、自分の判断で勝手に薬をやめることはしないようにしましょう)。

主症状である気分の落ち込みは、漢方では気の異常と考えます。
気は人の体を動かすエネルギーの源です。

気が不足している状態の「気虚」になると、疲れやすい、やる気が出ない、だるい、食欲がない、めまいがするなどの症状が出てきます。

気がうまく流れない状態の「気滞」では、イライラする、不安になる、気分が落ち込む、のどに違和感を感じるなどの症状が起こりやすく、お腹にガスがたまったり睡眠に問題が出てくることもあります。

「気逆」はストレスや怒りなどで気が逆行してしまっている状態です。
本来、気は上半身から下半身へと流れるものですが、逆行すると頭の方に流れてしまいます。
そのため、怒りっぽくなったり、のぼせや頭痛などの症状が起こったりします。

「気血両虚」とは、気の不足とともに、全身に栄養や酸素を運ぶ役割をする血も不足している状態です。
気虚による症状に加えて、動悸や不眠など血虚の症状も現れます。

体の中ではさまざまな要因が複雑に絡まりあい、こういった状態になってしまっています。
あなたの症状は何が大元の原因なのかを探り、原因に応じて気血水の過不足や流れを整える働きをする漢方を選ぶことが大切です。

主症状の治療のほかにも、漢方は活用できます。
抗うつ剤 で気分の落ち込みなどが良くなっても、やる気が出なかったり、のどの違和感や頭痛、肩こり、便秘など自律神経症状が残ったりすることがあります。
漢方は、こういった症状の改善が得意なので、抗うつ剤では取りきれなかった症状を改善させていくことができます。

また抗うつ剤の中には、便秘や口の渇き、胃腸症状、めまい、ふらつき、尿が出にくいなどの副作用が出てしまう薬があります。
基本的に副作用が強い場合は抗うつ剤が減量されますが、漢方 で副作用の症状を緩和させるケースもあります。

うつ病の漢方治療における注意点

西洋薬や一般的な病院で処方される漢方は症状に対して薬を処方するので、同じような症状の患者さんは同じような薬を飲むことになります。

けれども漢方の場合、診るのは症状だけではなく、患者さんの体質や現在のからだ全体の状態です。
ですから、同じような症状であっても、人によって処方される漢方は異なります。

西洋医学と東洋医学では、同じ漢方という言葉を使用していてもアプローチの仕方が違います。
「西洋医学の病院で漢方を処方されているけれど、いまいち効いている気がしない」という方でも、東洋医学での理論で診立てて、本来の使い方で処方されればよくなる可能性があります。

漢方を処方してもらうときは、しっかりと全身状態を見極めてくれる漢方薬局を選びましょう。
うつ症状が出ている根本的な原因を探るためには、生活習慣も含めてしっかりと話を聞いてくれる漢方薬局かどうかがポイントです。

ただし、東洋医学の漢方だからといって、どこの漢方薬局の漢方も品質が同じなわけではありません。

漢方薬は、粉やエキス、煎じ薬など異なる形状で流通していますが、煎じ薬がおすすめです。
また、原料である薬草を一つひとつ厳選するところから品質に責任を持ち、自社製造している漢方薬局を選ぶと良いでしょう。

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