「仕事に行こう思っても気力がなく、体も動かず、起きられない」
「仕事のことを考えると動悸が出て苦しくなり、通勤時間も不安でいっぱいになる」
ストレス社会で生活様式も変化している現代、このような悩みを抱えながらも無理やり起きて通勤している方は少なくありません。
突然の激しい動悸や息苦しさ、めまいに「このまま死んでしまうかも」と恐怖を感じたこともあるのではないでしょうか。
病院で検査して機能的に異常なしと言われても、これらの症状があるということは体から限界がきているというメッセージです。
このまま無理を続けると更なる症状悪化につながりかねません。
今回は動悸や不安感はどうして起こるのか、東洋医学的視点から解説し、漢方薬の期待される効果を紹介します。
いつ来るかわからない動悸に強い不安を感じている方の参考になれば幸いです。
動悸が起こる原因とは
動悸とは、心臓の拍動が強く速く脈打つことで、ドキドキしたり息苦しさを感じたりする状態です。
心拍の異常なので、命に直結する可能性があります。
動悸を頻繁に感じる場合は、自己判断せずに、まずは病院で精密検査を受けましょう。
動悸が起こる原因は、大きく分けて4種類あります。
1.不整脈や心臓疾患によるもの
心臓疾患があると、心筋を動かしている電気信号がうまく伝わらなくなるため、不整脈が起こりやすくなります。
2.貧血
貧血状態になると、酸素を運ぶヘモグロビンが少なくなり、体内に酸素が行き渡りにくくなります。
その分心拍数を上げて酸素を体内に運ぼうとするため、脈が速くなります。
3.甲状腺ホルモンの異常
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで脈が速くなり、動悸を感じます。
心房細動という不整脈も起こしやすくなります。
4.ストレス
心拍は自律神経によってコントロールされており、不安、緊張などのストレスを感じると交感神経が働き筋肉が緊張します。
その結果、心筋の収縮力も強くなり、心拍数が上がります。
健康な状態なら、副交感神経が作用して交感神経のはたらきを抑えようとします。
しかし、強いストレスが長く続き自律神経のバランスが崩れると、交感神経が優位な興奮状態を抑えることができなくなります。
このような状態が続くことで心臓の負担が大きくなってしまい、動悸や息切れなどの症状が出てしまいます。
動悸だけでなく、ストレスはさらに心身に影響して、眠れない、イライラする、やる気が起きないなど様々な不調を引き起こします。
これらの原因に対して、漢方治療は症状にとらわれずに体全体をみて、体質の根本原因にアプローチします。
それぞれだと思われる動悸の原因にも関連があるのです。
例えば、ストレスで胃腸がはたらかず消化吸収ができないと、鉄分が不足し貧血になると考えます。
バセドウ病はストレスなどの緊張状態が長く続くことで、全身の気のめぐりが滞り、熱が過剰になっている状態と捉えます。
仕事のことを考えて動悸がするのは出勤困難症の可能性がある
出勤困難症とは出社拒否症とも言い、不登校の大人版と言われています。
以下のようなさまざまな不調が出て、仕事に行こうと思っても行けません。
- 明日は仕事だと思うと眠れない
- 目が覚めても体が動かない
- 動悸や息苦しさを感じる
- 頭痛やめまいを感じる
- 腹痛や吐き気が出る
- 意欲、集中力が低下する
- 緊張感や不安感が強くなる
これらの症状は、過度のストレスから自律神経のバランスが崩れ、心身に不調が出ている状態です。
原因は、長時間労働による疲労の蓄積、能力と合わない仕事、挫折や喪失体験、人間関係や環境の変化により緊張感が続くことなどがあります。
このような状態で無理を続けることは、うつ病やパニック障害が悪化する可能性があります。
心身の不調に対する対処法:西洋医学と東洋医学の捉え方
西洋医学は対症療法で、症状や検査結果から原因を探り症状を抑える治療法です。
自律神経の乱れからくる動悸や不眠などの症状に対しては、抗不安薬や睡眠薬が処方されます。
これらの薬は慣れるまでふらつきや倦怠感などの副作用が出ることもあります。
症状が軽減されて調子が良くなって薬を中断すると、症状が再発してしまうことも珍しくありません。
一方、東洋医学は体全体のバランスを整える治療法です。
体を構成する五臓と体内をめぐる気・血・水のバランスが崩れると心身に不調が出るという考え方を元に、原因にアプローチします。
気とは生命エネルギーのこと。血はエネルギーをめぐらせる血液、水は血液以外の体内の水分を意味します。
行き過ぎた感情や生活の不摂生もそのバランスに影響し、不足したり巡りが滞ったりして不調が起こるのです。
漢方治療では気・血・水を補い、滞りを改善することで、五臓の本来のはたらきを取り戻し、不調を改善します。
出勤困難症の症状は過度なストレス、ネガティブな感情、不眠などで気・血・水のバランスが崩れている状態と言えます。
動悸は心悸と呼ばれ、五臓の心のはたらきに不調が起きていると考えられます。
心(しん)のはたらきとは
西洋医学的に心臓のはたらきは、全身に血液を送るポンプ機能とされていますが、東洋医学的に心は血液循環だけでなく、精神活動や思考活動をするはたらきもあると考えられています。
心(こころ)を表すときに胸に手を当てる動作は、その現れだとも言われています。
心のはたらきは4つの作用で支えられています。
心気(しんき) | 血液循環 | 血を全身にめぐらせるための気 |
心陽(しんよう) | 血が全身にめぐることで体を温める、全身の熱源や活動源 | |
心血(しんけつ) | 精神活動 | 精神活動を行うのに必要な栄養分になる血 |
心陰(しんいん) | 精神が過剰に興奮しないように落ち着かせる |
心の不調とはこれらの作用がバランスよくはたらかないため、動悸や精神症状に影響が出るのです。
心の不調に漢方治療で期待される効果とは
東洋医学的に動悸の原因とされる状態は主に以下の4つです。
1.心虚
心のはたらきが低下している状態で、心気・心陽が不足してポンプの機能が弱く、心血・心陰も不足し、精神活動に必要な血がめぐらず、心身が弱っている状態です。
動悸だけでなく、疲れが取れない、不眠、不安感など精神面に影響が多く出ます。
気や血の生成を促す漢方を使用します。
2.心火
心気・心陽が興奮した状態です。
イライラする、頭に血が上る、不安や焦りを感じ、動悸や血圧の上昇、発汗、不眠の症状が出ます。
心を冷やして過剰な熱を解消し、心のはたらきを押さえる漢方を使用します。
3.心血悪祖
心気や心陽が不足して心の血のめぐりが悪くて動悸が起こります。
ストレスや食習慣の影響もあるといわれ、胸痛がある、顔色が悪い、舌下静脈が怒張するなどの症状があります。
血のめぐりをよくする漢方を使用します。
4.水飲凌心
水分が代謝しきれず、心のはたらきを邪魔して動悸が起こります。
ストレスで胃腸のはたらきが弱まったり、血行障害で冷えたり、浮腫みやすくなります。
水分代謝を促し、胃腸のはたらきを促す漢方を使用します。
このように動悸だけでも原因がさまざまあります。
他に抱えている症状や生活習慣から体質を見極め、期待する効果をもつ生薬を組み合わせた漢方薬で治療します。
そのため動悸だけでなく、不安感などの精神的な不調まで改善できてしまうのが漢方治療のメリットです。
漢方を続けるうちに、動悸を感じなくなってきた、そういえば最近ぐっすり寝られるようになり、イライラすることも減っているなと気づくことでしょう。
動悸をはじめとする不調の改善には漢方がおすすめ
漢方治療は、体質を改善する漢方薬をその人に合わせて選ぶオーダーメイドの治療法です。
体質、体力、生活習慣などからわかる「証」の状態に合わせて有効成分を摂り、気・血・水のバランスを整えて、五臓の機能が本来の状態になるようにはたらきかけます。
西洋医学の薬ならば、動悸だけでなく様々な症状がある場合、出ている症状を抑えるためにいろいろな種類の薬を内服しなくてなりません。
そして症状に対しての薬の服用になるため根本的に治すことは難しいです。
抗不安薬や睡眠薬をやめると症状が再発することがあるのもそのためです。
特定の症状にピンポイントで治療するなら西洋医学は効果的ですが、いくつもある不調には、東洋医学的アプローチの方が体内からバランスを整えられるので、おすすめです。
市販の漢方薬でも効果は期待できる?
ドラッグストアで漢方薬を見かけたこともあると思います。
漢方薬は自然の生薬からできていて、西洋薬よりも体にやさしそうだからと試したことがある方は効果を実感できましたか?
市販されている漢方薬はエキス剤と言われ、処方の法則に従って生薬を調合し、煮出して抽出してから顆粒状にしたものです。
携帯しやすく手軽に飲めるメリットがありますが、一般的に使用できるように有効成分量も抑えられ、加工時に添加物が加えられていることもあります。
症状に合わせて自己判断で漢方薬を選ぶことは、効果を実感できないことにもつながるので、証を見極められる専門知識のある医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
また漢方薬には、煎じタイプのものもあります。
煎じ薬は生薬を刻んで調合し、十分煮出して有効成分を抽出して飲む漢方薬です。
煮出す手間がかかりますが、必要な生薬の有効成分をしっかり摂ることができるので、効果を実感しやすくなります。
市販の漢方薬で効果がなく、「薬局で相談して同名の漢方薬を処方してもらうと効果があった」ということはよくある話です。
出勤によるストレスで動悸が辛く不安である方は、他にも様々な不調を抱えていることが多いです。
同じ経験をした人に聞いた漢方を試してみようとしても、体質や生活習慣が異なると「証」が違い効果か感じられない可能性もあります。
動悸や不安、眠れないなどの症状は本当につらく、気力、体力が奪われます。
まずはお近くの漢方治療の知識がある、専門医や薬局に相談してみませんか。
体が動かない、不安が強く外出がむずかしい、近くに相談できるところがない、という方は、私たち漢方専門なつめ薬局へご相談ください。なつめ薬局ではオンライン相談の対応も可能です。
細やかなカウンセリングで証を見極め、厳選した生薬を配合した漢方薬を提供しています。
さらに、煎じ薬を1回分ずつパックにしてお届けするので、煎じる手間がなく、体調が不安定でも飲み続けやすくなっています。
体質を改善して心身を本来の元気な状態に戻して、動悸や不安感のない生活を取り戻すサポートをいたします。