2022年にWHOが発表したデータでは、日本の平均寿命は84.3歳と2位のスイスに約1歳の差をつけて堂々の1位となりました。
長年世界トップクラスの寿命を誇り、すっかりご長寿国というイメージが定着している日本ですが、実は健康寿命は延びていないのが現状です。
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。日本では平均寿命と健康寿命には約10年もの差があるといわれています。
平均寿命を延ばすためには認知症を含む要介護状態に陥らないことが重要になりますが、認知症を確実に予防する方法は残念ながらまだ確立されていません。
しかし最近の研究から、認知症は生活習慣病と深い関係にあることが分かってきました。
今回は、生活習慣病が認知症発症に及ぼす影響と、生活習慣病の改善に漢方薬が役立つ理由を解説します。
生活習慣が認知症発症へ及ぼす影響
2023年に発表された大阪大学の研究では、喫煙・肥満・高血圧・糖尿病といった生活習慣や生活習慣病が、認知症発症リスクの増加に関連していると報告されました。
生活習慣病とは「食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称」とされ、日本人の死因の上位を占める癌、心臓病、脳卒中も生活習慣病に含まれます。
気づかないうちに進行する生活習慣病
生活習慣病の多くは初期症状が乏しく、本人が気づかないうちに発症し進行するため「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」とも呼ばれます。異変に気が付いた時には病気がかなり進行した状態であることも少なくありません。
主な生活習慣病である高血圧・糖尿病・脂質異常症は、進行すると動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や脳出血を発症して脳血管性認知症に至る可能性があります。
また認知症の約6割を占めるアルツハイマー型認知症も、近年糖尿病との関連が報告されています。
上で示した大阪大学の研究では、認知症を予防するためには男性では喫煙・高血圧、女性では喫煙・高血圧・糖尿病のリスク因子のマネジメントが必要とされました。
生活習慣の改善は、生活習慣病の予防のみならず将来の認知症の予防にも効果的なのです。
病院を受診すれば生活習慣病は治る?
生活習慣病は病院を受診すれば治すことができるのでしょうか?
答えは‘NO’です。
生活習慣病は一度なってしまうと健康な状態には戻りにくい不可逆的な病気です。生涯に渡り治療を続け、根気強く付き合っていかなければなりません。
認知症、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患など命に関わる病気を防ぐために、まずは今現在の生活習慣を見直し生活習慣病を未然に防ぐことが大切です。
そして生活習慣病と診断されてからは、病院で行われる薬物療法(場合によっては外科的治療)と並行して、食事療法・運動療法・禁煙等を行い健康的な生活習慣を送る必要があります。
しかし西洋薬による薬物療法で血圧や血糖値を下げることはできますが、体質そのものの改善は望めません。
薬物療法や食事・運動療法だけで改善が難しい場合には、漢方薬と併用することをおすすめします。
漢方薬で生活習慣病を改善し認知症予防を
薬物療法など西洋医学的な治療が行われやすい生活習慣病ですが、急性期疾患ではなく長期的な治療を必要とする疾患は漢方薬の得意分野でもあります。
東洋医学からみた生活習慣病と、漢方薬の治療についてみていきましょう。
生活習慣病を未然に防ぐ東洋医学
近年、生活習慣病を未然に防ぐ、または進行させず健康寿命を延ばそうという考え方が広まってきました。しかし東洋医学には「養生」という概念があり、数千年も前から「健康に生きること」を大切にしています。
「養生」とは字の通り生命を養うこと。
中国伝統医学の古典である「黄帝内経」には、「ほどよく身体を動かす、質素な食事と衣服で暮らす、四季を感じる、良く寝てストレスをためない」などといった養生の基本の心得が書かれています。
東洋医学では未病、すなわち病気になる前の段階で食い止めるためには、「養生」によって生活習慣を整えることが重要とされているのです。
養生は健康寿命を延ばすための知恵とテクニック。これはまさに生活習慣病の予防に適した考え方といえるでしょう。
生活習慣病に対する漢方薬のアプローチ
東洋医学的にみる生活習慣病の多くは、生命維持のための物質である「気・血・水」のバランスが崩れて引き起こされます。
養生だけでは整いきれないバランスを立て直すサポートに漢方薬が用いられています。
生活習慣病における代表的な症状と漢方薬による治療方法をみていきましょう。
・高血圧
「瘀血(おけつ)」タイプ
細い血管が硬くなり血流が悪くなったことによる高血圧で、手足のしびれや冷感、血色不良などが特徴です。
血液の鬱滞を解消し解毒する効果のある駆瘀血剤を用いて、血流の改善を図ります。
「肝火(かんか)」タイプ
怒りや憂鬱などの精神的なストレスや不眠が続くと熱がこもり、自律神経が興奮し血圧が上昇します。頭痛や顔面紅潮、目の充血などを伴います。
熱を冷ます作用のある漢方薬を用いて感情をコントロールする肝の興奮を鎮め、血圧を低下させます。
「腎陰虚」タイプ
加齢により生命活動を司る腎の働きが衰えることによって起きる高血圧です。慢性的な高血圧や、加齢と共に血圧が高くなってきた場合が当てはまり、ほてりや発汗、喉の渇き、倦怠感などがみられます。
腎の働きを補う補腎薬を用いて体に潤いを与え、こもった熱を冷まします。
・糖尿病(高血糖)
糖尿病は漢方では「消渇」という病証に相当します。口が渇いて大量の水を飲む、倦怠感や脱力感が強く痩せるといった糖尿病の症状をあらわした病名です。
「気陰両虚」タイプ
全身倦怠感やエネルギー不足の症状を「気虚」と呼び、体内の水分が不足し口が渇いたり血がドロドロの状態を「陰虚」呼びます。この気虚と陰虚の両方の症状がある「気陰両虚」が糖尿病の状態です。
治療には体に不足している体液を補い、気力を高め、血糖値を下げる漢方薬を使用します。血糖値をただ下げるだけでなく、体力の消耗も改善します。口渇がひどい場合は胃腸の働きを高めて気や水の不足を補う漢方薬も用いて治療をします。
・脂質異常症
「痰飲(たんいん)」タイプ
痰飲とは体の基本的な構成成分である気・血・水のうち、水(体液など)が過剰になったり流れが滞ったりして、血管内で老廃物と化し蓄積したものを指します。
漢方薬による治療では、体液を巡らせ痰飲の排泄を行うことで水の循環が正常に行われるようサポートします。また消化吸収を促す漢方薬も合わせて使用し、食物の停滞を緩和させて痰飲を減らし、脂質異常症を改善させることもあります。
「湿熱(しつねつ)」タイプ
湿熱とは、食べすぎや飲みすぎが原因で 体内に不要な「水」と「熱」がたまり不調が起こっている状態です。過剰な湿熱が血中に停滞することにより、脂質異常症になります。
体内の熱を冷まし、たまった老廃物を排泄させる利尿や解毒などの作用のある漢方薬を用いて治療を行います。
このように、漢方薬による治療では体質から根本的に改善することで生活習慣病を治療します。そのため西洋薬による薬物療法や食事・運動療法に併せて漢方薬を取り入れることで、より一層の治療の効果を期待できるのです。
生活習慣病を予防、改善して認知症リスクに備えたい方へ
ここまで、認知症発症に生活習慣病が関係していること、生活習慣病予防のための体質改善に漢方薬を取り入れることをおすすめしてきました。
生活習慣病の予防や治療に漢方を使ってみたいときはどうすれば良いのでしょうか。
効果的な漢方薬治療ができる薬局を選びましょう
まずはかかりつけ医に漢方薬による治療が可能か相談してみましょう。その際、漢方薬を煎じ薬で処方してくれるかどうかがポイントです。
煎じ薬とは生薬をじっくり煮出した液体の薬で、成分が十分に抽出されています。顆粒タイプやシロップタイプの漢方薬と違い有効成分をまるごと摂取できるため、同じ処方内容でも効果が一段と高くなります。
かかりつけ医で煎じ薬の処方が難しい場合は、自宅近くの漢方専門薬局を探して相談してみましょう。
それでも難しい場合は私たち「漢方専門なつめ薬局」へご相談ください。
なつめ薬局は、全国でも数少ない煎じの漢方薬を自社製造している薬局です。
厳選した生薬の成分を最大限に引き出し、患者さん個々の体質に合った漢方薬の処方が可能です。また病名にとらわれず、患者さん自身が本来持っている力を引き出す本治療法を心がけた診療を行っております。
自宅から遠く来局が難しいという方もご安心ください。電話相談やオンライン相談も承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。漢方薬のご相談はもちろん、日々の生活の養生についてもご説明いたします。
なつめ薬局が処方する漢方薬で生活習慣病を改善し、認知症を予防して健康寿命を延ばしましょう。