妊娠しても、 2回以上の流産・死産をくり返す状態を「不育症」といいます。流産や死産をくり返して、心身ともにつらい思いをしている人もいることでしょう。
今回は、不育症について以下のことを解説します。
• ストレスから流産をくり返していた女性が漢方治療により妊娠・出産できた症例
• 東洋医学からみた不育症と漢方での治し方
• 不育症に漢方治療をおすすめする理由
さらに、流産をくり返すときの養生法や、不育症で漢方治療を希望するときのポイントについても紹介します。
【症例紹介】ストレスでくり返していた流産を漢方治療により克服
流産をくり返していた女性がなつめ薬局に来局されて、漢方治療によって出産された実際の症例をご紹介します。
・患者
30歳代後半の女性
・経緯
1人目のときはストレスが多かったにもかかわらず妊娠・出産できた。2人目の妊娠を希望しているが胎児が育たず、1年のうちに数回流産している。生活習慣を改善しているが今のところ効果は感じられない。また体調を崩しやすくなり持病の喘息が悪化している。そのため体質からの改善を希望して、来局された。
・経過
丁寧にカウンセリングしたのち、漢方理論で分析し選んだ漢方薬を服用していただいた。合わせて生活習慣についてアドバイスを行い、その通りに改めていただいた。生理前のトラブルが徐々に少なくなり、漢方治療を始めてから半年後に妊娠。妊娠中につわりや血糖のトラブルがみられたが漢方薬を継続服用していただき、無事に出産された。
東洋医学からみたストレスでくり返す流産の原因は
西洋医学でいう不育症は、東洋医学では「滑胎(かったい)」といいます。くり返す流産に深く関わるのは、五臓の「肝」と「腎」です。「肝」には、体を構成する気(エネルギー)や血(血液や栄養)の巡りを調整する働きがあります。「腎」は成長・発育・生殖機能をつかさどっています。
今回の症例について、東洋医学のとらえ方や漢方理論での治し方をみていきましょう。
ストレスでくり返す流産に対するとらえ方
症例の女性は、1人目の出産時からストレス過多であったため、2人目の妊娠時にはストレスに弱い肝の働きが悪くなり、気や血の巡りが滞るようになったと見受けました。そのためホルモンバランスが乱れたり、子宮の働きが低下したりして、流産しやすい状況になっていたと考えられます。
症例の女性が生活習慣の改善をしていても効果を感じられなかった理由としては、流産をくり返すことで精神的プレッシャーがかかり、肝の働きが回復しなかったことが推測されました。精神的なプレッシャーが気・血の巡りをますます悪化させ、流産をくり返す状態になっていたと考えられます。さらに自律神経の働きにも深く影響が及び、気管支のコントロールが失調して喘息症状が悪化したと判断したのです。
ストレス状態が長引くと気や血の巡りが滞ることにより、肝の働きに影響を受ける胃腸の機能も失調します。そのため消化吸収がうまくいかず、妊娠中に血糖のトラブルやつわりが生じたと見受けました。
漢方理論で分析したストレスでくり返す流産の治し方
症例の女性に対して、実際に行った漢方治療を解説します。
ストレスやプレッシャーにより肝気が滞っていたため、気の流れがスムーズになる漢方薬を用いました。気の流れが改善すると血の巡りも良くなるため、子宮や卵巣に新鮮な血液や栄養が届くようになるのです。それによりホルモンバランスが安定し、生理前のトラブルが減ってきました。
症例の女性の場合、流産をくり返していたことで、体が十分に回復しきれていないことも心配されたため、生活習慣のアドバイスも行いました。流産予防のための睡眠の取り方や食生活を実践していただき、治療を始めて半年後に妊娠、そのまま出産に繋がりました。
また症例の女性は、妊娠中につわりや血糖のトラブルがみられました。妊娠前から肝気が滞っていたことによって生じた胃腸の不調であったため、漢方薬を継続していただき肝気を巡らせながら胃腸の働きを回復させるようにしたのです。
ストレスでくり返す流産に漢方治療をおすすめする理由
ストレスによって流産をくり返している場合に、漢方治療をおすすめする理由は2つあります。
• 医学的な異常がなくても治療ができる
• 不育症以外の症状の改善も期待できる
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
医学的な異常がなくても治療ができる
不育症のリスク要因には、抗リン脂質抗体症候群・子宮形態異常・甲状腺機能異常などがあります。しかし不育症の約65%は、原因がわからないというデータがあるのです。
西洋医学の場合、抗リン脂質抗体症候群のようにメカニズムが明らかになっているものに対する治療は行えますが、原因がわからないものに対しては治療が難しくなります。
その一方で、東洋医学の治療方針には「陰陽の調整」があります。心身のバランスが乱れると病気が発症するため、治療は心身全体のつり合いを取っていくという考え方です。病名の有無にとらわれず、患者さんの体質や生活習慣、気候による変化などのあらゆる情報から判断し、漢方理論で選んだ薬で治療を行います。
また東洋医学では、漢方治療のみならず養生も大切にしています。東洋医学の理論に基づいた生活習慣に改めると日常的な体質改善につながり、漢方治療の効果を高めるのです。
不育症以外の症状の改善も期待できる
東洋医学では、治療原則のひとつに「治病求本」があります。症状を引き起こす根本的な体質にアプローチして、自然治癒力を高めるという考え方です。そのため漢方治療では、ひとつの漢方薬で不育症以外の不調の改善も見込めます。
一方、西洋医学の場合は、ひとつの症状に対して1種類の薬で治療していきます。体の不調がいくつかあれば、症状の数だけ服用薬が増えてしまう可能性があるのです。
ストレスで流産をくり返さないための養生法
流産した後は、出産したときと同じくらい体に大きな負担がかかっています。正しい養生を行い、体をきちんと回復させて次の妊娠の準備をしましょう。
十分な休息を取る
体力を回復させるためには、睡眠がもっとも大切です。日々の睡眠時間は7~8時間を目安にしましょう。
東洋医学の考え方に「子午流注」があり、時刻と体の働きの関係を示しています。夜11時~午前3時までは、新陳代謝がもっとも盛んになり、浄化された血液が作られる時間帯とされています。遅くても夜11時までには寝るように心がけましょう。
体を冷やさない
体が冷えると「血」の流れが悪くなるため、子宮に十分な栄養が届かなくなります。お腹が冷えやすい人は腹巻やカイロで温めるようにしましょう。お腹周りだけではなく、首・手首・足首を冷やさないように、ストールやレッグウォーマーで覆うと体が温まりやすくなります。締め付け感の強いものやヒールの高い靴は、気血の流れを滞らせるので避けてください。
食生活に気をつける
食生活では体を冷やさないことと、「血」を補うことが大切です。体を冷やす作用のある生野菜・白砂糖・冷たい飲食物はできるだけ食べないようにしましょう。体を温めるねぎ・しょうが・黒糖や火の通った野菜類をおすすめします。流産をくり返すと血が不足しがちになるため、血を増やすレバー・にんじん・ぶどうを摂ると良いです。妊娠に深くかかわる五臓の「腎」の働きを補う黒豆・黒ごま・ひじき・くるみを食事に取り入れるようにしましょう。
ストレスでくり返す流産で漢方治療を行うときのポイント
ストレスでくり返す流産に対して漢方治療を希望するときは、以下の3つのポイントを取り入れている施設を選ぶようにしましょう。
• カウンセリングを重視している
• 漢方理論に基づいて薬を選んでいる
• 煎じの漢方薬を自社製造している
流産をくり返す背景は、患者さんによって異なります。適切な漢方薬を処方してもらうためには、丁寧にカウンセリングを行い、根本的な原因の見極めが重要です。
現在は保険診療も市販薬も、ほとんどが病名や見た目の症状から漢方薬を選んでいます。この方法では、患者さん本来の体質や不調の根本的な原因から外れているケースがみられ、効果が期待できないことがあるのです。
製品化された漢方薬は、加工している途中で一部の有効成分が失われてしまいますが、煎じの漢方薬では有効成分を十分とることができます。
施設選びに困ったら
上記で挙げた施設がお近くにないときは、私たち「漢方専門なつめ薬局」へご相談ください。なつめ薬局では対面のほかに電話やオンラインによるご相談も受け付けております。
どのような相談方法でも丁寧なカウンセリングを行いますのでご安心ください。さらに手間のかかる煎じの作業をこちらで行い、一回分ずつパックしてお渡しするので、本格的な煎じの漢方薬をお手軽に飲むことができます。
流産をくり返してつらい思いをしている人は、ぜひ漢方専門なつめ薬局までご遠慮なくお問い合わせください。