医療機関で薬を処方されているにもかかわらず、かゆみや湿疹がなかなか治らなくて、ストレスを感じている人がいらっしゃることでしょう。
今回は治らないかゆみや湿疹について、なつめ薬局にご来局された患者さんの症例や、漢方治療をおすすめできる理由などを解説します。
漢方治療により全身のかゆみと湿疹が改善した実際の症例をご紹介
治らない全身のかゆみと湿疹でなつめ薬局にご来局され、漢方治療によって症状が改善した実際の症例をご紹介します。
・ 患者
50歳代後半の女性
・ 経緯
全身掻痒、眼瞼炎、掌蹠膿疱症、頭部湿疹など全身にわたる皮膚トラブルで悩んでいる。病院の薬で症状の悪化は抑えられているが、新しいかゆみや湿疹が継続的にあるので身体の中からの改善を希望し来局された。
・ 経過
丁寧にカウンセリングを行い、漢方理論で分析して選んだ漢方薬を服用してもらった。開始3~4日目に今までと異なる湿疹が広がったが、3週間後にはすべての湿疹が減ってきた。
さらに乳製品が多かった食生活を見直したところ、新しいかゆみや湿疹の症状はでないようになり、湿疹を気にせず過ごせるようになった。
現在は、お酒やカレーを食べた後に湿疹があらわれるが、食事内容を調整しながら過ごしている。
東洋医学からみた治らないかゆみと湿疹
上記で紹介した症例をもとに、治らないかゆみと湿疹を東洋医学の視点で解説します。
治らないかゆみと湿疹の東洋医学的な概念
東洋医学では、病気の原因のひとつに「六淫」と呼ばれる邪気があります。六淫は、風・暑・火(熱)・湿・燥・寒の6つに分けられます。今回の症例の場合、どの邪気が関わっているか詳しくみていきましょう。
皮膚のかゆみは、東洋医学で「風邪(ふうじゃ)」の影響を受けているとされています。
人間の体で風邪は、外風と内風にわけられます。外風は自然界の風が体内に侵入して生じるもので、内風は体内の陰血が不足することによって生じるものです。
内風の方が慢性化しやすく治りにくいことから、症例の女性の場合は内風による風邪と考えられました。
頭部湿疹のような赤いプツプツした湿疹が出ている場合は、東洋医学で「湿邪(しつじゃ)」が影響していると考えられています。湿邪とは、体に余計な水分や脂肪がたまっている状態です。
症例の女性は、体内に粘り気を生みやすい乳製品を多く摂っていたため、余分な水が皮膚に滞ってしまったと見受けられました。湿邪が長い間にわたって皮膚にとどまると熱を生じてしまい、湿疹や皮膚炎につながりやすいのです。
眼瞼炎や掌蹠膿疱症は、東洋医学において皮膚に熱が溜まってしまう「熱邪(ねつじゃ)」が影響していると考えられます。症例の女性のケースでは、上記で述べた湿邪が皮膚にとどまり、熱が溜まってしまったと考えられました。熱邪では、皮膚に対して赤く炎症を起こしたり、膿をもった膿疱を作ったりするなど激しい症状がみられます。
今回の症例では、風邪・湿邪・熱邪の3つの邪気によって引き起こされた症状だと最終的に推測しました。
治らないかゆみと湿疹の漢方薬での治し方
今回の症例で、どのような治療を行っていったのか解説します。
風邪によるかゆみに用いるのは、熱を抑え風を取り除く生薬です。体中をめぐる性質のある風邪を取り去ると、全身に広がるかゆみがやわらぎます。
湿邪による頭皮湿疹に使うのは、体の水分バランスを整える生薬です。皮膚に溜まった余分な水分を排出して、プツプツとした湿疹を改善します。
熱邪による眼瞼炎や掌蹠膿疱症に用いるのは、体の熱を冷ましてしずめる生薬です。熱を取り除くことで、皮膚の炎症や化膿している箇所の症状をやわらげます。
さらに症例の女性には、風邪や熱邪を生じさせる陰血不足がみられました。このようなケースでは陰血を補う生薬を用いて、皮膚に栄養を与え邪気に負けない体づくりをめざします。
今回の症例では、上記で挙げた生薬を適切なバランスで配合した漢方薬を用いて治療を行いました。
症例の女性に対して治療開始3〜4日後に現れた全身の発疹は、治療による好転反応です。
好転反応とは一時的に症状悪化がみられることをいいます。好転反応は多くの場合、服用を始めてから数日以内にあらわれ、ほどなく症状が改善する特徴があります。
治らない原因不明のかゆみや湿疹に漢方治療をおすすめする2つの理由
なかなか治らない原因不明のかゆみや湿疹に、漢方治療をおすすめする理由を2つあげます。
1.できるだけ副作用を抑えて症状改善を目指せる
漢方治療では、現時点であらわれている症状に対する対症療法を「標治」といいます。東洋医学の治療原則は、病気を引き起こす原因を見つけて根本から改善していくことです。しかし症例の女性のように炎症や膿疱があり、急を要するケースでは標治を優先するというように、その場その場で対応できます。
一方、西洋医学におけるかゆみや湿疹の治療は、漢方治療でいう標治のみです。一般的な西洋医学の治療は、湿疹や皮膚炎にステロイド外用剤、かゆみについては抗ヒスタミン成分の内服薬が使用されます。
ステロイド外用剤では、長期連用すると塗布部位の皮膚が薄くなったり、にきびができやすくなったりするといった注意するべき副作用があります。抗ヒスタミン成分の内服薬では、眠気が出るものが多くあるため、車の運転など日常生活に支障が出ることがあるのです。
漢方治療では、一人ひとりの体質や既往歴を確認して薬を選ぶため、効果が得やすく副作用が出にくくなっています。治療途中に変化がみられた場合も、漢方薬の調整ができるため、その時点の体調にあった治療を続けられるのです。
2.かゆみや湿疹を引き起こす体質から見直せる
東洋医学には、「治病求本」の治療原則があり、病気の原因となる体質から改善する「本治」を重要視しています。
症例の女性は、西洋医学の治療で症状悪化はなかったものの、かゆみや湿疹が完治することはありませんでした。
漢方治療では、かゆみや湿疹を引き起こしている原因を突き止め、根本から改善を図ります。なかなか治らないかゆみや湿疹は、体全体のバランスが崩れていることが原因です。
漢方薬を使って心身のバランスを整えることで、人間が本来持っている自然治癒力を高めるため、症状の改善が期待できます。
東洋医学では漢方治療だけではなく、食養生も大切にしています。症例の女性の場合は、食事内容の偏りがあって体のバランスが崩れやすかったため、食事のアドバイスも行い、治療効率を高めました。東洋医学の理論に基づいた食養生を取り入れると、より早い体質改善につながり、症状悪化やぶり返しを防げるのです。
治らない原因不明のかゆみや湿疹で漢方を利用するときのポイント
なかなか治らない原因不明のかゆみや湿疹で漢方治療を受けたいときに、より効果を得やすくなる3つのポイントを紹介します。
ポイント①カウンセリングを重視している
1つ目は、カウンセリングに時間をかけている施設を選ぶようにしましょう。治らないかゆみや湿疹が生じる背景は一人ひとり異なります。適切な漢方薬を処方するためには、患者さんの体質・性格・食生活・運動・周りの環境など詳しい情報が必要です。丁寧に聞き取りを行って集めた患者さん個々の情報が、漢方薬を選ぶ基準となります。
ポイント②漢方理論に基づいて薬を選んでくれる
2つ目は、漢方理論に基づいて分析して薬を選んでくれる施設が良いです。これまで漢方薬を服用した人のなかには、症状の改善がなかった人もいらっしゃることでしょう。
現在、保険適用薬・市販薬ともに漢方薬は見た目の症状や病名をもとに、選ぶことが多くみられます。
このような場合は、患者さん本来の体質や背景にあった薬が処方されることが少ないのです。一人ひとりの生活習慣や体質について十分聞き取り、東洋医学の理論に基づいて分析することで、症状改善が見込める漢方薬が処方されます。
ポイント③煎じの漢方薬を自社製造している
3つ目は、自社製造の煎じの漢方薬を用意できる施設を選ぶと良いでしょう。製品化された漢方薬では長時間の加工作業により一部の有効成分が失われがちですが、煎じの漢方薬はより十分な量の成分を摂ることができます。
施設選びに困ったら
上記で挙げた施設がお近くにないときは、私たち「漢方専門なつめ薬局」へご相談ください。なつめ薬局では対面のほかに電話やオンラインによるご相談も受け付けております。
どのような相談方法でも丁寧なカウンセリングを行いますのでご安心ください。さらに手間のかかる煎じの作業をこちらで行い、一回分ずつパックしてお渡しするので、本格的な煎じの漢方薬をお手軽に飲むことができます。
治らない原因不明のかゆみや湿疹でお困りの人は、ぜひ漢方専門なつめ薬局までお気軽にお問い合わせください。