パニック障害に漢方薬は使える?漢方的解釈とともに解説

パニック障害は適切な治療を続けることで治る心の病気ですが、治療期間が長引いたり、薬が合わなかったりしてお困りの方がいらっしゃると思います。

一般的な治療薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や抗不安薬だけでなく、漢方もパニック障害の治療に効果があることが分かっています。

今回はパニック障害の漢方的解釈と、症状に対する漢方での治し方について解説します。
症状でお悩みの方にご参考にしていただけると幸いです。

パニック障害とは

パニック障害で見られる一般的な症状と、漢方的にどのような解釈をしているのかを見ていきましょう。

パニック障害の症状

パニック障害は不安障害のひとつで、前ぶれもなく突然動悸やめまい・息苦しさ・発汗・手足の震えなどを繰り返し起こすことにより、普段通りの生活が送れない状態です。以下の特徴的な症状が3つあります。

  • パニック発作

何の前ぶれもなく、シチュエーションも関係なく突然発作が起こり、何度も繰り返します。発作の症状には強い不安感と恐怖が伴い、「死んでしまうのではないか」と思うほどの激しい動悸や呼吸困難などが現れます。

  • 予期不安

パニック発作を繰り返すうちに、「また発作を起こすのではないか」「もっと症状がひどくなるのではないか」「次は本当に死んでしまうかも」といった不安が平常時でもつきまとうようになります。
そのため外出ができなくなったり、仕事に行けなくなったりするなど日常生活に支障が出てきます。

  • 広場恐怖

過去に発作を起こした場所や、発作を起こした際すぐに助けを求められない場所を恐れたり避けたりする症状が現れます。
一人で出かける、乗り物に乗る、人混みへ行く、美容院へ行く、会議に参加するなど個人によって苦手と感じる状況は異なります。
広場恐怖でも外出を避ける傾向により、日常生活に支障が出ます。

漢方からみたパニック障害

漢方では、体を構成する五臓と気・血・水のバランスを確かめて、パニック症状を起こしやすい体質がどこから来ているのかを見極めます。

漢方でいう「五臓」とは、西洋医学の内臓とは意味が異なり、器官の機能と精神状態も含めた概念を指しています。また「気」は命のエネルギー、「血」は赤い液体で体に栄養をもたらすもの、「水」は透明の液体で血以外の体を巡る水分とされていて、気が血・水を動かしていると考えられています。

パニック障害では、精神のバランスが取れなくなることで、気の流れが乱れたり悪くなったりします。
気の流れが悪くなると、血の巡りも悪くなっていきます。

五臓では心・肝・脾・腎が深く関与しており、どの臓が失調を来たし、パニック障害の引き金になっているかを見ていきます。

漢方的解釈と西洋医学の治療方法の違い

パニック障害の治療方法について、西洋医学と漢方的解釈の違いについて見ていきましょう。

西洋医学の治療方法

西洋医学では症状を科学的・理論的に分析して、病気の原因に直接アプローチしていきます。

パニック障害では、脳内のノルアドレナリンやセロトニンなど神経伝達物質のバランス異常が関連していると分かってきたため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬のSSRIが主に治療薬で使われます。
また不安症状を抑えるための抗不安薬を使用することもあります。

漢方による治療方法

漢方では、患者さんを四診と呼ばれる診察方法を使って総合的に観察し、病気の原因となっているバランスの乱れを整えていきます。

そのため病名が同じパニック障害であっても、発症の原因が異なれば、使う漢方薬も人それぞれで違ってきます。

パニック障害の症状に対する漢方での治し方

パニック障害の症状に対して、漢方薬がどのように役立つのか見ていきましょう。

パニック障害でよく見られる証と漢方の使い方

パニック障害では次の4つの証がよく見られます。

  • 脾気虚

五臓の「脾」は消化・代謝機能を持ち、体内の気・血を産生しています。
脾が失調を起こすと消化機能の低下や食欲不振により、体内の気や血が不足してしまい、神経も衰弱してしまいます。
脾気をおぎなう漢方薬で体力と気力をつけます。

  • 心血虚

五臓の「心」は精神活動と血を循環させる機能を持っています。
心が失調を起こすと、血の量が減って流れも悪くなるため、神経に十分な血が行きわたらなくなり、不安を感じやすくなります。
心に血をおぎなう漢方を使って治していきます。血が補われると、神経系の機能もだんだん回復してきます。

  • 肝鬱気滞

五臓の「肝」は気・血・水の循環をコントロールし、精神安定化・血の貯蔵・筋の機能維持の働きを持っています。肝が失調すると、循環が悪くなって気が滞ってしまい、情緒が不安定になります。
肝の気を巡らせる漢方薬を使っていきます。

  • 腎虚

五臓の「腎」は生命力・免疫力を維持する機能を持っています。
腎が失調すると、体全体の機能が低下し、精神面も弱くなってきます。
漢方では腎に活力を与えて、全身に元気を取り戻すようにします。

実際のパニック障害ではいくつかの証が複雑にからんでいることがあるため、患者さん一人ひとりに合わせて漢方薬を組み合わせていきます。

パニック障害に漢方治療を取り入れるメリット

パニック障害の治療に漢方を取り入れるメリットは数々あります。

1つ目は、漢方では患者さん全体を観察して、心身のバランスをとる治療を行っていくため、検査しても原因の分からない不調の改善が期待できます。

2つ目は、漢方薬は西洋薬と比べて依存性がとても少ないため、症状が改善したときに薬を中止したり減らしたりしやすいです。

3つ目は、抗不安薬など西洋薬に多い眠気の副作用が少ないため、仕事をしている人でも車の運転をする人でも使いやすいと言われています。

4つ目は、漢方薬と西洋薬を併用することで、西洋薬の効果をおぎなったり副作用を軽減したりできます。

一方、漢方治療で注意する点もあります。

漢方薬は心身のバランスをとり体質を改善していくことが目的なので、短期間の服用の際自己判断で中止したり調整したりしてしまうと、効果が十分に得られない可能性があります。

焦らずじっくり漢方治療に取り組んでいただくことが大切です。

漢方薬の剤形には手軽なエキス剤と伝統的な煎じ薬があり、それぞれメリット・デメリットがあります。

エキス剤は比較的飲みやすい点と持ち歩きしやすい点がメリットとして挙げられますが、既製品のため個人の症状に合わせた調整がしにくいのが大きなデメリットです。

煎じ薬は煎じるのに手間がかかり持ち歩きしにくいというデメリットがあるものの、エキス剤より種類が豊富であること、煎じるときに漢方の香りの効果も期待できること、個人に合わせて生薬を加減できることがメリットとして挙げられます。

そのため煎じ薬を専門に扱っている施設では、品質にこだわり厳選した生薬を使い、患者さんのカウンセリングに十分な時間をかけ、一人ひとりの症状に合わせた自社製造の漢方薬を提供しています。

パニック障害の治療に漢方薬はおすすめ

パニック障害は個人によって現れる症状に差があるため、一人ひとりの体調に合わせて心身のバランスを整える漢方薬は取り入れやすい治療です。
伝統的な煎じの漢方薬であれば、個人の状態に合わせて生薬を加減しながら調合できます。

まずはご近所でしっかり話を聞いてくれて、煎じの漢方薬を自社製造で提供してくれるクリニック・薬局でご相談することをおすすめします。

ご近所にそのようなところが無い場合には、私たち「漢方専門なつめ薬局」にご相談ください。
当薬局では対面だけなく電話やオンラインによる相談も受け付けており、どのご相談方法でも丁寧なカウンセリングを行います。

体調でお困りの際はどうぞお気軽にご連絡ください。

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