漢方で不安障害・パニック障害を改善

突然理由もなく不安になり、ドキドキする、呼吸が苦しくなる…。
次にいつまた同じように発作が出るのか不安が続いて日常生活を満足に送れない。
こんな症状に悩んでいないでしょうか。

心配や不安が過度になり日常生活に支障が出ている状態は、心療内科や精神科を受診すると不安障害と診断されます。
上に書いたようなパニック発作やそれに続く予期不安がある場合は、不安障害の中でもパニック障害と分類されます。

薬や精神療法で治療が進められますが、なかなか不安やパニック症状が治まらず困っている方もいるでしょう。
パニック発作が治っても、倦怠感やめまいなどの自律神経症状が続く方もいらっしゃいます。

こころとからだの両面に出る症状の改善は、漢方が得意とするところです。

漢方では西洋医学とは全く異なるアプローチで不安障害・パニック障害を治療します。
漢方の観点からみた不安障害・パニック障害とはどのようなものなのでしょうか。

不安障害・パニック障害に対する西洋医学と 東洋医学の考えの違い

まずは、西洋医学と東洋医学では、不安障害・パニック障害について全く違う観点で見ていることを確認しましょう。

西洋医学では、不安障害・パニック障害は脳の病気と考えられています。
心身両面でのストレスなどが複雑に絡み合い、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れてしまうことで、さまざまな症状が出るという理論です。

そのため、治療は脳に直接作用する薬の服用がメインとなります。
対症療法として、神経伝達物質のバランスを調整するために、抗うつ薬や向不安薬が用いられます。

また認知行動療法などの精神療法が取り入れられることもあります。

しかしこういった治療で副作用に悩んでいる方や薬がなかなかやめられない方もいるでしょう。
パニック発作が無くなっても、いつまでも身体症状が残っている方もいるかもしれません。

一方、東洋医学では脳のように局所的に問題があるのではなく、その症状が出やすくなっているからだ全体の環境に問題があると考えます。

ですので、西洋医学では同じ不安障害と名前がついても、東洋医学の面から見ると、患者さんによって大元の原因は異なります。

人によってからだの環境の乱れ方や乱れる原因が異なるため、からだの環境を整える漢方の処方も変わってきます。

西洋医学での「不安障害・パニック障害には、この抗うつ薬」のように、「不安障害・パニック障害には、この漢方」とは単純に決められないので、気をつけてくださいね。

漢方における気血水や五臓と不安障害・パニック障害の関係

東洋医学では、人間のからだは「気・血・水」という3つの要素でできていると考えます。

気・血・水が十分にあり全身をスムーズに巡っていると、心身は健康な状態です。
逆に、過不足があったりどこかで停滞していたりすると、からだのバランスが崩れ症状が出てきます。

「気」は生命を維持するためのエネルギーのようなものです。
精神や神経のはたらきに関与し、内分泌系を司るはたらきもあります。
そのため気に異常があると、精神的な不調や自律神経症状が起こりやすくなるのです。

不安障害・パニック障害の患者さんにも、気に問題のある方が多くいます。

また、東洋医学独自の内臓のとらえ方である「五臓」も、漢方治療を考える上でとても大切です。

肝・心・脾・肺・腎を五臓といいます。
西洋医学の臓器と名前は似ていますが、単純に内臓そのものを指すのではなく、はたらきも含めたもっと広い概念を指しています。

肝はストレスと関係が深く、気や血が不足するとうまく機能しません。
また心、脾、腎も不安障害・パニック障害の症状と深く関連しています。

五臓は西洋医学の内臓のようにそれぞれが独立してはたらいているわけではありません。
互いに協力しあって全体のバランスを調整しています。
ですから、どこかひとつ悪いところが出てくると、ほかの臓腑にも悪影響を与えます。

不安障害・パニック障害における漢方治療

漢方治療では、不安感やパニック発作などの症状を引き起こす、大元の原因を見極めることが重要です。

この見極めたものを「証(しょう)」と呼びます。
体質や症状の現れ方を総合的に判断した東洋医学独自の考えで、西洋医学でいう診断のようなものです。

証を判断するためには、外部からの刺激に対する反応の出方や体力の充実度、気・血・水の状態などをみていきます。
漢方は、証をもとに処方されます。

不安障害・パニック障害の方に多い証には、肝鬱気滞、脾気虚、心血虚、腎虚などがあります。

肝鬱気滞は、ストレスの影響を受けやすい肝の気が停滞している状態です。
過度な緊張や息苦しさなどが現れます。肝鬱気滞の治療は、気の巡りを良くする漢方が用いられます。

脾気虚の方は、脾の気が不足して脾のはたらきが弱くなります。
脾は、消化吸収や食べ物から取り出した気や水のもとを全身に運ぶはたらきを持つため、結果として全身の気も不足してしまいます。
脾気虚は、漢方により体力や気力を補う治療をします。

心血虚は、全身的に血が不足しており、特に心のはたらきが悪い状態です。
心は精神活動と関連が深く、動悸や驚きやすくなるなどの症状が出ます。
心血虚の方は、漢方で心血を補うことが大切です。

腎虚は、腎の機能が低下しています。
腎ははたらきの一つが生命エネルギーの貯蔵庫です。
腎虚になるとエネルギーが不足して心身ともに全身が衰弱し、恐怖を感じやすくなります。
腎虚の方は、腎を補う漢方を使って根本からのからだの立て直しが必要です。

このように西洋医学では同じ不安障害・パニック障害と呼ばれる症状でも、漢方では患者さんによって治療法はさまざまです。

漢方は、表に出てくる症状を抑えるのではなく、お一人おひとりの体質を考慮して根本からお悩みの解決を目指します。

そのためには、ご自身の証をしっかり判断できる人に漢方を処方してもらわなければなりません。

また有効成分だけを取り出して統一した基準で作られている西洋薬と違い、漢方は同じ名前の薬でも、一部の成分だけが含まれている製品もあれば生薬を煎じて丸ごと摂取できるものもあります。

漢方は複数の生薬で構成されていて、それぞれの成分が互いに影響してからだに作用します。
ですので、漢方を処方してもらう際は、品質の良い生薬を用いて煎じ薬を自家製造している漢方薬局を選ぶと良いでしょう。

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