東洋医学で考える、健康と病気とは?

昨今、健康意識の高まりとともに再注目されることが多い東洋医学や漢方。

そもそもなぜ、今なお高度な医療が発展し続けている西洋医学より、何千年も前に発展した東洋医学に関心をもつ人が多いのでしょうか。

今回は、西洋医学と東洋医学の違いや、東洋医学における病気や健康の考え方についてお伝えしていきます。

東洋医学における健康・未病・病気について

まず、からだの不調を考えたとき、西洋医学は「健康か?病気か?」の2つに分類されるのに対し、東洋医学は、「健康か?未病か?病気か?」の3つに分類されることが、西洋と東洋の医学の大きな違いではないかと思います。

「病気でなければ健康」という従来の西洋医学の考え方ですと、例えば血液検査やエコーなどを行って、異常がなければ治療は施されません。

現代の西洋医学で説明ができない症状を「不定愁訴」と呼びます。
この「なぜか調子が悪い不定愁訴」の状態を改善したい方は、日本中におそらくごまんといるはずです。

そこで登場するのが、東洋医学です。

先にもお伝えした通り、東洋医学には「健康・未病・病気」いう健康と病気の間にある『未病』のことも考えます。

「未病」とは字のとおり「いまだ病にならず」を意味します。

まだはっきりとした病気ではありませんが、健康レベルが落ちて改善する必要がある状態です。
放っておくと悪化し病気になってしまうので、改善し健康を目指す必要があります。

健康とは、規則正しい生活ができ、季節や自然界の変化に準じ、食事や運動、休息がバランスよく取れ、精神的にも安定し、感情や意欲の起伏が激しくない穏やかな状態です。

健康のためには、からだを栄養し正常に動かすために必要な気血津液(水)が過不足なく巡り、五臓が遺憾なく機能を発揮できていることが重要となります。

未病は、気血津液(水)がなんらかの原因で巡りが悪くなったり、五臓の働きが低下したりすることによって、からだのバランスが崩れる不調の状態です。

未病を放置すると、さらに気血津液(水)が滞り、五臓の働きが悪化し、ついに病気となります。

西洋医学において病気ではなく、原因も不明な不定愁訴のような健康と病気の間にある不調や悩みは、東洋医学における未病でもあります。

そして、未病は気血津液(水)を十分に巡らせ五臓の働きを整えることで改善でき、長い人生における未来の病気を予防することとなるのです。

不定愁訴と呼ばれる未病の改善には東洋医学

東洋医学と西洋医学は、病気や健康、未病や、からだへの考え方、病気の改善への取り組み方が大きく違います。

例えば、多くの女性が悩む『便秘』という不調に対して、西洋医学は溜まった便を出す目的で下剤のようなお薬等を勧めます。

これに対して、東洋医学はまず「なぜ便が出なくなってしまったのか?」ということを考えます。

ひとことで「便秘」といっても冷えによるものなのか、逆にほてりによるものなのか、血流の悪さなのか等、人によってさまざまな原因があると考えることも東洋医学の特徴です。

それから「どのような原因から身体が変化し便が出なくなったのか?」をつきとめます。

この病気の発生プロセスと原因がわかってはじめて、「便を自然に出すためには、この人のからだをどう変えていかなくてはいけないのか?」という視点をもちます。

そして不調や病気を根本的な解決に導くために、漢方をはじめとしたさまざまな治療法で治療に取り組みます。

この未病や病気の原因と経過プロセスのことを東洋医学では『病機(びょうき)』といいます。

病機(びょうき)について

『病機』とは、病気がどのように発生し、発展、変化したかというしくみである病理機序のことを指します。

この病機は大きく5つに分類されます。

  • 陰陽失調

からだの中で陰と陽のバランスが崩れることによって病気の原因となるもの。

  • 気血失調

気がもつ推動作用・温煦作用・防御作用・気化作用・固摂作用や、血がもつ滋養作用・滋潤作用・精神作用の気血のもつ生理作用のバランスが崩れることによって病気の原因になるもの。

  • 病邪失調

からだを正常に動かすために必要な生気と、外因・内因とよばれる体にとって害となる邪気とのバランスが崩れ、病気の原因となるもの。

  • 臓腑失調
    五臓の働きが損なわれたり、臓腑への気血津液が正しい状態ではなかったり、また臓腑の陰陽の失調によって、病気の原因となるもの。
  • 経絡失調
    経絡は外邪の侵入経路となることや、気血津液の通り道である経絡自体の滞りや不足などによって、病気の原因となるもの。

病機から、「四診」といって視覚を通して観察する「望診」、聴覚と嗅覚を通して観察する「聞診」、問いかけと応答によって観察する「問診」、触覚を通して観察する「切診」によって、からだの中の状況を判断し、『証(しょう)』をたてます。

証とは、東洋医学の独特な考え方ですが、病気の本質を示し、治療の方針とするためのものです。

西洋医学では複数人の同じような症状に同じ病名がついても、東洋医学の場合は人によってちがう証がつくことも当然あります。

これは、「便秘」という不調であっても、なにが病機なのかという差によって現れる違いです。

東洋医学でからだをケアすることのメリットは未病治療

東洋医学の大きな財産は「経験医学」であることです。

何千年という膨大な歴史から、このような症状であればこの漢方といった方法から、一人ひとりの体質や生活環境、不調の状態などから病機を判別し、適切な治療方法をオーダーメイド的に提案し、解決に導きます。

長年の不調で病院通いしていた方が、漢方や鍼灸治療に切り替えたら、すっかりよくなったという話を聞くのは、未病の段階から病機に基づいた証をたて、その証を治療したからにほかなりません。

西洋医学は、目的に対してお薬などを処方するので、結果がとても早く現れるというメリットがあります。

下剤を飲めば、便秘もすぐに解消され、お腹はすっきりすることでしょう。

しかし、病機がなくなり体質が変わったわけではないので、根本的な原因の解決ができていません。
ですので、またすぐに同じように苦しめられます。

すぐに下すことができる漢方などもありますが、基本的に東洋医学の多くが体質改善を目的とした治療を行います。

病機をたどり、その不調の原因となる気血津液(水)の巡りや五臓の働きを根本から解決することは、一朝一夕でできることではないため、改善には時間がかかることもあります。

しかし、東洋医学で病機をさぐり根本からからだを改善することは、未来の不調や病気も防ぎ、健康なからだづくりへの貯金となるでしょう。

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