大人のアトピー皮膚炎が良くなったり悪くなったりするのはなぜ?繰り返す原因と漢方の考え方
良くなってきたと思っていたのに、また赤くなってきた。
しばらく痒みも落ち着いていたのに、仕事が忙しくなった頃からまた悪くなった。
アトピーと長く付き合っている方なら、こんな経験があると思います。
子どもの頃から皮膚科へ通い、塗り薬や保湿も使ってきた。食事や生活にも自分なりに気をつけている。
それでも繰り返していると、
「どうして自分は何度も悪くなるんだろう」
と思いますよね。
今回は、アトピーが良くなったり悪くなったりする理由を整理しながら、漢方ではその身体をどう捉えるのか、お話ししてみたいと思います。
アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返す病気
アトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。
皮膚のバリア機能の弱さや免疫反応など、いくつもの要因が関係しています。
現在の皮膚科治療では、皮膚に起きている炎症や痒みを抑え、良い状態を維持していくことが重視されています。
ステロイド外用薬をはじめとする外用薬、保湿によるスキンケアに加え、現在では生物学的製剤やJAK阻害薬など治療の選択肢も増えています。
赤みや痒みが強い状態が続けば、掻くことでさらに皮膚が傷つき、炎症が強くなることもあります。
今起きている炎症や痒みに対応することは、アトピーを考えるうえで大切な取り組みです。
そのうえで私は、
「なぜ今回は悪くなったのだろう」
というところにも目を向けています。
アトピーがなぜ「今回」悪くなったのか
アトピーの悪化には、さまざまなものが関係します。
乾燥、汗、衣服などによる摩擦や刺激、ダニやハウスダストなどの環境アレルゲン、ストレスなども知られています。
特に大人のアトピーでは、仕事の忙しさや人間関係など、心理社会的なストレスが症状の変化に関係することもあります。
そこで一度、
「自分はどんなときに悪くなっているだろう?」
と振り返ってみてください。
仕事が忙しくなった頃だったか。
睡眠が乱れていなかったか。
季節が変わる時期だったか。
疲れが溜まっていなかったか。
胃腸の調子や便通はどうだったか。
女性なら、月経周期によって皮膚の調子に変化があるか。
ここで見てほしいのは、皮膚が悪くなる時期に、自分の身体全体ではどんな変化が起きているのかということです。
この視点が、漢方で身体を見るときにはとても大事になります。
漢方薬では「証」を通して身体全体を捉えます
漢方相談では、まず皮膚の状態を見ます。
赤みが強いのか。
熱を持っているのか。
乾燥が強いのか。
ジュクジュクしているのか。
痒みはいつ強くなるのか。
こうした皮膚の状態も、身体を知るための大切な情報です。
漢方では、赤みや熱感が強い状態を「熱」、ジュクジュクした状態を「湿」、乾燥が強い状態を「燥」や血の不足といった視点から考えることがあります。
そこに、暑がりなのか冷えやすいのか、体力があるのか疲れやすいのか、便通や食欲、睡眠などの状態を重ねていきます。
漢方には「寒熱」「虚実」という身体を見る基本的な物差しがあります。
さらに「気・血・水」という考え方や、漢方五臓と呼ばれる「肝・心・脾・肺・腎」という概念を使って、身体の働きやバランスを捉えていきます。
たとえば漢方では、「肺」は皮膚や体表の働きと深く関わり、「脾」は飲食物から身体を養う気や血を生み出す働きと関係すると考えます。
皮膚の状態、冷えや熱感、疲労、胃腸、便通、睡眠、月経など、さまざまな情報を重ねながら、
「この人の身体は今、どのような状態にあるのか」
を考えていきます。
漢方では、この身体全体の状態を捉えたものを「証」と呼びます。
同じアトピー性皮膚炎という診断名でも、赤みや乾燥の出方、体力、胃腸、睡眠、冷えや熱感などが違えば、捉える証も変わってきます。
だからこそ、漢方相談では病名だけを見るより、その人自身を詳しく見ていくことが大切になります。
皮膚に現れている症状から、身体全体を考える
漢方では、身体のさまざまな働きは互いに影響し合っていると考えます。
たとえば「湿」という偏りが強い人では、皮膚にジュクジュクした症状が出る一方で、身体の重だるさや胃腸の不調、むくみなどが一緒に見られることがあります。
「血」が不足して身体を十分に養えていない状態では、皮膚の乾燥に加えて、疲れやすさや月経の状態などにも特徴が現れることがあります。
こうした一つひとつの情報をつなぎ合わせて証を考えていくのが、漢方の身体の見方です。
皮膚に現れている変化は、身体全体の状態を考えるための入口にもなります。
アトピーの相談で皮膚の状態を確認しながら、睡眠、胃腸、疲労、冷えや熱感、生活の変化などについても詳しく聞いていくのはそのためです。
ここまで身体全体を見ていくと、アトピーという病名だけを追っているときとは違った景色が見えてきます。
そして、この考え方が「標治」と「本治」につながります。
漢方の「標治」と「本治」
漢方には「標治」と「本治」という考え方があります。
今、表に現れている症状への対応を考えるのが「標治」。
その症状が現れている背景にある身体の状態を考えるのが「本治」です。
アトピーであれば、赤み、痒み、熱感、乾燥、ジュクジュクした状態など、現在つらい症状への対応を考えます。
同時に、
なぜこの人は繰り返しているのか。
なぜこの時期になると悪くなりやすいのか。
皮膚以外にはどんな変化が起きているのか。
今の身体には、どのような偏りがあるのか。
というところまで見ていきます。
今つらい症状に対応しながら、その背景にある身体の状態も整えていく。
なつめ薬局では、この本治の考え方を重視しています。
20代、30代だからこそ、自分の身体を知ってほしい
アトピーのつらさは、皮膚に出ている症状だけでは測りきれないと思います。
顔が赤くなって、人と会うのが嫌になる。
写真に写りたくない。
着たい服を選びにくい。
夜に痒くて眠れず、翌日の仕事に響く。
症状が落ち着いているときでも、
「また悪くなるかもしれない」
と考えてしまう。
20代、30代は、仕事、恋愛、結婚など、これからの人生について考えることも多い時期です。
その中で、アトピーの状態によって予定を変えたり、人との距離を考えたりする生活が続けば、負担も積み重なっていきます。
そして、この先も長く自分の身体と付き合っていきます。
だから私は、今出ている皮膚の症状への対応と一緒に、
「自分はどんなときに調子を崩しやすいのか」
「身体にはどんな傾向があるのか」
「皮膚以外には、どんな変化が現れているのか」
というところにも目を向けてほしいと考えています。
「自分の場合はどうなのか」を考えてみる
長くアトピーと付き合ってきた方は、自分なりに症状が悪くなる条件を分かっていることもあると思います。
そこからもう少し視野を広げて、
いつ悪くなるのか。
その前に何があったのか。
その頃、睡眠や食欲、胃腸、便通、疲労などはどうだったのか。
というところまで振り返ってみると、自分の身体の傾向がさらに見えてくることがあります。
なつめ薬局では、皮膚の状態、これまでの経過、生活、身体全体の状態などを伺いながら「証」を考えていきます。
今出ている症状を見る。
そして、この先も付き合っていく自分の身体を見る。
アトピーを何度も繰り返している方には、一度そんな視点から自分自身の状態を考えてみてほしいと思っています。
