【男性不妊と漢方/札幌】身の回りの化学物質が男性不妊の原因になっている!?

札幌の漢方専門なつめ薬局の漢方薬生薬認定薬剤師:阿部祐哉です。

妊娠を望んでいるカップルであれば、精子の働きは気になるところでしょう。
男性側に不妊の原因のある割合はどれくらいかご存知でしょうか?

WHOでは、不妊症カップルのうち、男性にのみ不妊原因のあるカップルは24%、女性のみの原因のあるカップルが41%、男女両方に原因のあるカップルが24%、原因不明が11%としています。

つまり、不妊症カップルの少なくとも48%で男性にも不妊の原因があるのです。

日常的に体内に取り入れている化学物質が、精子の運動や受精に悪影響を及ぼす可能性があるという研究報告があります。研究結果の詳細を確認していきましょう。

【精子の働きは日常生活で使われる化学物質で悪くなる】

私たちが日常使っている日焼け止めや歯磨き粉、食品添加物などに含まれている化学物質が精子の機能に直接的に影響している、という研究結果が2014年に報告されました。
普段から使っている日用品や食品に含まれる化学物質が、精子の運動性や受精能力を低下させるかもしれないとなると、不妊治療中のカップルにとって気になるところではないでしょうか。

この研究は、日常生活で広く使われている化学物質が、精子の運動や受精にどのような影響を与えるかを試験管内で調べたものです。

その結果、なんと実験した96種類の化学物質のうちおよそ3分の1となる33種が、精子に悪い影響を及ぼすことが分かりました。

具体的には、一部の日焼け止めに用いられる紫外線吸収剤4-メチルベンジリデンカンファー、薬用せっけんや歯磨き粉などに使われる殺菌剤トリクロサン、化粧品や接着剤などに使われる可塑剤フタル酸ジブチルなどです。

【内分泌かく乱物質とは?】

生体内における正常なホルモンの作用に影響を与え、結果として内分泌系の正常な働きを乱してしまう化学物質のことを、内分泌かく乱物質または環境ホルモンと呼んでいます。

例えば、今回の報告で精子に悪影響を及ぼす可能性が示された化学物質の1つトリクロサンは、女性ホルモンのエストロゲンや男性ホルモンのテストステロンなどに影響を与えるかもしれないと動物実験で指摘されています。

また、アメリカでは、トリクロサンを含む一部の薬用石けんが通常の石けんと比べて殺菌性に優れているといえず免疫系にも影響を与えるとして、2017年に販売が禁止されました。

今回の研究でも、33種類の化学物質が内分泌かく乱物質として、精子の働きを妨げている可能性が示されたのです。

【カルシウム濃度が精子の機能に悪影響を与えている】

精子の尾の細胞膜にはCatSperと呼ばれる、カルシウムが細胞の内と外に移動できる通路があります。
この通路の扉を開け閉めすることで、細胞内のカルシウム濃度を調節しているのです。

ところが内分泌かく乱物質がCatSperを通ると、扉の開閉が上手く調節できずに細胞内のカルシウム濃度が上がってしまいます。

カルシウムは細胞内でさまざまなシグナル伝達を行っているため、濃度が変化するとその働きが変わります。

カルシウムレベルが高くなると、精子の尾の左右の動きが弱くなり遊泳が妨げられたり、精子が卵子と融合するために酸素を放出するタイミングが早くなってしまったりする可能性があるそうです。

また、精子が目的地である卵子を見つけるためにも、ホルモン信号を必要としています。
そのため、内分泌かく乱物質によって、卵子への到達が妨げられてしまうのです。

【内分泌かく乱物質にはどう対処したら良いのか?】

1990年代後半から内分泌かく乱物質の存在は、アメリカをはじめとする世界中で注目を集めるようになりました。

日本でも、同年代にテレビなどで特集が組まれるようになったので、名前を聞いたことのある人も多いでしょう。
日本では環境ホルモンと呼ばれることも多いですが、内分泌かく乱物質と同じものを指しています。

妊娠を望んでいる方、特に男性不妊で悩んでいる方にとって、日常生活で使われている化学物質に内分泌かく乱作用があるという報告は、見過ごせない情報です。

しかし、これらの化学物質すべてを、生活から遠ざけることは現実的でありません。

33種類すべての化学物質を把握して、どの製品にどの化学物質が含まれているのかを確認することは難しいでしょう。また、これらの化学物質がどれくらいの量までが許容できるのかはまだ分かりません。

仮に、すべての原材料が確認でき許容量が確定していたとしても、現代の生活ですべてを避けて通ることは困難です。

できるだけ化学物質の入っていない歯磨き粉や石けん、日焼け止めなどを使ったり、食品添加物が多く含まれている加工食品を食べないようにしたりするぐらいが、実際に取り入れることのできる対処法ではないでしょうか。

今回ご紹介した化学物質以外にも、タバコや熱、酸化ストレスなど、精子の働きに影響を与えることが分かっているものが多々あります。
これらのリスク因子を減らす生活をするとともに、規則正しい生活や食生活など心身全体のバランスを整えるようにしていきましょう。

【内分泌かく乱物質に負けない体を】

現代社会で生活をしていく上で、化学物質をまったく体に入れないのは無理があります。
だからこそ、内分泌かく乱物質を体内に取り入れたとして影響を受けない体づくりが大切です。

もちろん漢方も、体質改善の大きな力となります。

体本来に備わっている生殖能力を高めることができれば、外部から少々内分泌かく乱物質が入ってきたとして妊娠への道が近づくでしょう。

漢方の世界で、気血水弁証で「血」、臓腑弁証で「腎」が、生殖や成長をつかさどると考えられています。
腎の機能を高めることで、最終的に妊活成功を目指しましょう。

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