札幌の漢方専門薬局の阿部祐哉です。
コロナ禍で日常生活への影響が長期化する中、肌のトラブルに悩まされている人も多いのではないでしょうか。
在宅勤務が増えたり、思うように外出や趣味のスポーツを楽しめなくなったりしている方も少なくないでしょう。
大人ニキビはさまざまな要因が組み合わさって発生しますが、運動不足もニキビができる大きな原因のひとつです。
今回の記事では、ニキビの漢方的な考え方と運動不足の関係についてをまとめてあります。
大人ニキビの原因はいろいろ
思春期ニキビと大人ニキビの違い
ニキビと一口でいっても、10代のころに多く見られる思春期ニキビと、成人してからできる大人ニキビでは、原因や対処法が違います。
思春期ニキビは、成長期特有の皮脂の過剰分泌が原因です。
急激に増えた皮脂が毛穴につまりニキビとなって現れます。
大人になってホルモンのバランスが整ってくると、自然と症状が落ち着くこともありますが、何年も続いたりニキビ跡が残ってしまったりすることもめずらしくありません。
早めにしっかりと治療をしていくことが大切です。
一方、吹き出物ともいわれる大人ニキビは、毎日の生活習慣やまちがったスキンケア方法、生活環境など、さまざまな原因が複雑にからみあって症状となって出てきます。
栄養バランスの崩れや睡眠、仕事や人間関係のストレスは、ニキビの原因となる肌のターンオーバーの乱れを引き起こします。
本来ははがれ落ちるはずの古い角質がいつまでも肌に残っていることで、毛穴がつまりニキビができてしまうのです。
また、良かれと思ってしている毎日のスキンケアがニキビの原因になることもあるので要注意です。
肌には外からの刺激を防ぐバリア機能があります。
洗顔時に、皮脂を取り過ぎたり強くこすり過ぎたりすると、バリア機能が弱まってしまいます。
自分の肌質に合わないスキンケア用品を使うことも、大人ニキビの原因です。
そのほか、花粉や大気汚染物質などが毛穴につまって、ニキビ症状を引き起こすこともあります。
毎日肌に触れるタオルや寝具を清潔に保っておくことも重要ですね。
にきびと運動不足
運動不足も、ニキビの原因です。
適度な運動は、体力の向上やメンタル面の維持、ダイエット効果だけでなく、肌にとっても良い影響を与えます。
運動をすると、多くの酸素を取り込み血行が良くなります。
血液のめぐりが良くなると、毛細血管を通じて全身のすみずみまで栄養や酸素が行きわたり、新陳代謝が促進されることで肌のターンオーバーも整います。
運動により発汗作用も、美肌にとって重要です。
汗をかくと肌に含まれる水分が多くなり、角質がやわらかくなります。
角質がやわらかくなると毛穴につまった皮脂が出やすくなるので、角質の中にたまった皮脂が酸化してニキビの元となる角栓の成長を防ぎます。
また汗は皮膚常在菌にとって良いエサです。
皮膚常在菌には、花粉や大気の汚れなどから肌を守るバリア機能を作り出す役割があります。
運動によって汗をかくことで、バリア機能が保ちやすくなるのです。
さらに、軽い運動はメンタル面に良い影響を与えることが知られています。
精神状態を安定させる脳内物質の分泌により、ニキビの原因となるストレスの軽減効果も期待できるでしょう。
大人ニキビと漢方
このように、運動はさまざまな側面からニキビ対策に役立っています。
けれども、満足に運動ができる環境ではなくなり困っている方もいるでしょう。
コロナ禍の影響で室内にいる時間が増えると、ついだらだらと間食してしまうなど食生活が乱れにもつながります。
病院のニキビ治療は、塗り薬が中心です。
できてしまったニキビの炎症をしずめ、目立たないようにするという考え方です。
塗り薬では、新しくできるニキビを抑えることはできません。
一方、漢方では、ニキビができやすい体質を根本的に改善することを目的とします。
体の内部でバランスが崩れると、皮膚に症状となって現れます。
漢方で、そもそもニキビができないように体の処理能力を高め、結果として肌の状態を良くします。
次々とできるニキビをモグラ叩きのように薬で抑え続ける方法と、根本的にニキビができない体にする方法、どちらがあなたの目指したい体でしょうか。
漢方では、ニキビなどの肌トラブルは、五臓六腑のうち「肺」に問題があると考えます。
五臓六腑とは、漢方における内蔵の考え方です。
肺は皮膚や汗腺と関連が深く、肺に余分な熱がこもるとニキビができやすくなります。
この余分な熱を取ってあげて体内のバランスを整えることで、結果としてニキビが発生しないようにするのです。
肺以外にも、ストレスの影響を受けやすい「肝」や「脾」の働きが悪くなると、ニキビを引き起こします。
ストレスを受けて気のめぐりが悪くなると、肝の気が滞り、熱がこもってニキビが発生します。
脾はエネルギーの源である気・血を作り出し、全身に運搬する働きを担います。
脾の働きがおとろえると十分な気・血を作り出せません。
そうすると血を貯める臓器である肝でも血が不足し、相対的に気が余ります。
体の外側には同じニキビとして症状が出ていても、体の内側の問題はお一人お一人で違います。
漢方薬を服用する際は、体の状態を見極めて自分にあった処方をしてくれる薬局で、煎じタイプの漢方薬を用意してくれるところを選びましょう。
一度崩れてしまった体内のバランスは、食事や睡眠などの生活習慣を変えるだけで戻そうとしても、簡単ではありません。
漢方薬の力も借りて、土台から整えてニキビのないきれいな素肌を取り戻しましょう。