起立性調節障害がなかなか良くならないときに考えたいこと|症状だけでなく身体全体を見る
子どもが朝、なかなか起きられない。
起きても頭痛やだるさがあり、学校へ行けない。ところが午後になると少し元気になり、夜には普通に話したり、好きなことをしたりできる。
起立性調節障害と診断され、生活にも気をつけている。それでも思うように良くならないと、
「このまま待っていていいのだろうか」
「ほかにできることはないだろうか」
と考える保護者の方もいると思います。
特に夏休みが終わり、学校生活が再開すると、「今日、学校へ行けたか」がどうしても気になります。
ただ、起立性調節障害の身体を考えるとき、登校できたかどうかだけでは見えてこないことがあります。
漢方では、もう少し細かく身体を見ていきます。
起立性調節障害では、身体で何が起きているのか
起立性調節障害(OD)は、自律神経による循環調節がうまく働かなくなることで、起立時を中心にさまざまな症状が現れる疾患です。
朝の起床困難、立ちくらみ、気分不良、頭痛、腹痛、動悸、食欲不振などがみられ、午前中は調子が悪く、午後になると回復してくることもあります。
そのため周囲からは、
「午後は元気なのに、なぜ朝だけ起きられないの?」
と思われることがあります。
しかし、本人の気持ちだけで解決できる問題とは限りません。
また、「朝起きられない=起立性調節障害」と決めつけることもできません。診断では症状の確認に加えて、別の病気が隠れていないかを確認し、新起立試験などを使って身体の状態を評価します。
起立性調節障害には複数のサブタイプがあり、重症度や心理社会的な要因なども含めて治療方針が検討されます。
ここまでは西洋医学から見た起立性調節障害です。
では、漢方ではどう見るのでしょうか。
漢方では「起立性調節障害」という病名から薬を決めません
漢方相談で私たちが知りたいのは、「起立性調節障害です」という情報だけではありません。
たとえば同じように朝起きられない子でも、
- 食欲がなく、食べる量が少ない。
- 食べるとすぐお腹が張る。
- 軟便や下痢が多い。
という子もいれば、
- 頭痛やめまい、吐き気が目立つ。
- 雨の日に調子が崩れやすい。
- 身体が重く、むくみやすい。
という子もいます。
手足が冷たく、顔色が悪い子もいれば、反対にほてりやのぼせが目立つ子もいる。
眠りが浅い、夢が多い、夜になると目が冴える、緊張すると腹痛が起こるなど、睡眠や精神的な緊張との関係が強く見える場合もあります。
これらを漢方では、気・血・水、陰陽、寒熱、虚実、そして五臓六腑の働きなどから整理していきます。
難しそうに聞こえるかもしれません。
でも、見ているのは目の前にいるその子の身体です。
朝起きられない背景に「気」が足りているかを見る
漢方でいう「気」は、身体を動かし、さまざまな機能を働かせる力として考えます。
- 朝になっても身体を起こす力が出ない。
- 少し動くだけですぐ疲れる。
- 声に力がない。
- 食欲がなく、食べても元気につながらない。
こうした様子が重なる場合、漢方では「気虚」という見方をすることがあります。
特に私たちがよく確認するのが、脾(ひ)の状態です。
漢方でいう脾は、西洋医学の脾臓そのものを指しているわけではありません。食べたものから身体を支えるものをつくり、全身へ届けていく働きとして捉えます。
どれだけ「しっかり食べなさい」と言っても、胃腸が弱っていて十分に受け止められなければ、身体を立て直す材料につながりにくい。
起立性調節障害の相談でも、私たちは朝起きられるかだけではなく、
- 「食べられているか」
- 「食べた後はどうか」
- 「便はどうか」
などをお伺いします。
必要に応じて、人参や黄耆、白朮といった生薬が検討されることがあります。
ただし、「起立性調節障害だから人参」という意味ではなく、その子の身体をどう捉えるかによって必要な生薬は変わるという考えです。
めまい、頭痛、身体の重さ。「水」の偏りを見ることもあります
起立性調節障害では、めまいや頭痛、吐き気などを伴うことがあります。
漢方では、このような症状を考えるときに「水(すい)」という視点を使うことがあります。
水とは、身体に必要な水分と、その巡りを含めた考え方です。
必要なところには水分があり、不要になったものはきちんと動いていく。
このバランスが崩れた状態を「水滞」「水毒」などと表現します。
- めまいがする。
- 頭が重い。
- 身体が重だるい。
- むくみやすい。
- 天候によって調子が変わる。
こうした症状が重なっていれば、水の巡りという角度から身体を見ることがあります。
白朮、茯苓、沢瀉など、水の偏りを考える際に使われる生薬もあります。
冷えが強い子と、熱がこもっている子では見方が違う
もう一つ、漢方で重要なのが寒熱です。
- 手足がいつも冷たい。
- 寒がりで、温めると楽になる。
- お腹も冷えやすい。
こうした「寒」が強く出ている子がいます。
一方で、
- 顔がほてる。
- 口が渇く。
- 夜になると熱っぽくなる。
- イライラしたり、寝つきが悪かったりする。
といった「熱」の傾向が見える子もいます。
「朝起きられない」という結果だけを見れば同じです。
しかし漢方では、身体が冷えて働きが弱くなっている状態と、熱の偏りがある状態は違うものと考えます。
だからこそ、病名だけで漢方薬を決めることが難しいのです。
成長期だからこそ「腎」という視点も大切にします
漢方には「腎(じん)」という考え方があります。
これも西洋医学の腎臓だけを意味する言葉ではありません。
漢方では、成長や発育、生殖、加齢など、人が生まれてから成長していくための根本的な力と深く関係するものとして腎を捉えます。
起立性調節障害が多くみられる年代は、身体が大きく変化していく時期でもあります。
大人と同じように一日を過ごしているように見えても、身体の中では成長のために多くのものを必要としています。
漢方相談では、現在出ている症状だけではなく、
「もともと丈夫な子だったのか」
「成長とともに体調がどう変化したか」
「疲れた後、どのくらいで回復できるのか」
といったことも見ます。
これは、今ある症状を一時的に抑えることだけを目的にせず、身体の土台をどう捉えるかという本治の考え方につながります。
緊張やストレスも「気の巡り」として身体から考える
起立性調節障害では、心理社会的な要因についても評価することが重要とされています。
ただ、「ストレスが原因ですね」で片づけてしまうと、本人も家族も納得しにくいと思います。
漢方には「肝」という考え方があり、その働きの一つとして気をのびやかに巡らせることを考えます。
- 学校のことを考えるとお腹が痛くなる。
- 緊張すると頭痛がする。
- 夜になると考え事が止まらない。
- イライラした後に体調が大きく崩れる。
こうした身体と感情の動きも相談では確認します。
漢方では心と身体を完全に切り離して考えません。
かといって、身体症状を「気持ちの問題」にしてしまうわけでもありません。
気持ちが身体にどう影響し、身体の状態がまた気持ちにどう影響しているのか。
そこまで含めて一人の状態として見ていきます。
「学校へ行けたか」だけで回復を判断しない
保護者の方にとって、登校できるかどうかが気になるのは当然です。
ただ、
昨日は学校へ行けたから良くなった。
今日は行けなかったから悪くなった。
これだけで判断すると、身体の変化を見落とすことがあります。
以前より朝食が食べられるようになった。
頭痛のない時間が増えてきた。
便通が安定してきた。
以前より眠れるようになった。
午前中ずっと横になっていたのが、少し早く動けるようになった。
何かをした翌日の疲れ方が軽くなってきた。
漢方で身体を見る場合、こうした変化も重要です。
なぜなら私たちが考えたいのは、「学校へ行かせるにはどうするか」より、その子の身体が自分で動ける状態へどう近づいていくかだからです。
西洋医学で診てもらいながら、漢方という別の角度から身体を見る
起立性調節障害には医学的な診断や評価が必要です。
漢方を使うからといって、西洋医学による診療とどちらか一方を選ぶ必要はありません。
西洋医学では、起立時の血圧や心拍数の変化などを評価し、起立性調節障害のタイプや重症度を捉えます。
漢方では、
- 気は足りているのか。
- 気はうまく巡っているのか。
- 血や水に偏りはないか。
- 身体は冷えているのか、熱が偏っているのか。
- 脾、腎、肝などの働きをどう考えるのか。
- 虚している部分と、滞っている部分はどこなのか。
という別の物差しを重ねます。
同じ子でも、「気虚だけ」「水滞だけ」ときれいに分かれるとは限りません。
脾の弱さがあり、十分に気を養えず、そこに水の偏りが重なっている。
あるいは、もともとの虚があるところに緊張が続き、気の巡りまで悪くなっている。
実際の身体は、こうしていくつもの状態が重なっていることがあります。
だから私たちは、症状の名前だけを聞いて漢方薬を決めるのではなく、その子の状態を一つずつ確認していきます。
なかなか良くならないとき、「その子の身体」をもう一度見てみる
起立性調節障害が長く続くと、家族の生活も少しずつ病気中心になっていきます。
朝起こす。
今日は学校へ行けるか確認する。
欠席の連絡をする。
食事を気にする。
夜になると、明日の朝は大丈夫だろうかと考える。
そんな日々が続くと、「どうすれば学校へ戻れるのか」ばかりを考えてしまうことがあります。
けれど、身体は「登校できた・できなかった」だけでは評価しないほうがいいです。
食べる力はあるのか。
眠る力はあるのか。
身体を温める力はあるのか。
必要なものを巡らせる力はあるのか。
動いた後に回復する力はあるのか。
そして、それらがどこで崩れているのか。
なつめ薬局では、こうしたことを丁寧に確認しながら、表面に出ている症状と、その背景にある身体の状態の両方を見る「本治」を重視しています。
起立性調節障害という診断名は同じでも、一人ひとりの身体は全くの別物です。
すでに診療や生活上の工夫を続けているものの、なかなか変化が見えない。
あるいは、「起立性調節障害という病名は分かった。でも、この子自身の身体がどうなっているのかを、もう少し考えてみたい」と感じている。
そのような場合には、漢方という角度から身体を見直すことも、一つの選択肢です。
なつめ薬局では、症状名だけから漢方薬を選ぶのではなく、その子の身体全体を確認したうえで、必要な生薬を考えていきます。
今の状態を一度整理してみたいという方は、ご相談ください。

