不妊治療の薬
女性の妊活でも、男性の不妊治療でも、最も良く使われるお薬のひとつに漢方薬が挙げられます。
特に、医師が用意する顆粒や粉・錠剤のようなタイプではなく、煎じて飲むタイプの本格的な漢方を求めて、漢方専門薬局に多く訪れるといいます。
なぜ、妊活や不妊治療に漢方薬が良く使われるのでしょうか?
また、病院で不妊治療を受けている方がわざわざ専門薬局を訪れるのは、どのような理由なのでしょうか?
漢方に20年以上携わっており、札幌で「漢方専門なつめ薬局」を経営している阿部祐哉さんに、お話しをお伺いしました。
阿部 祐哉(あべ ゆうや)
・薬剤師
・漢方専門なつめ薬局の代表取締役
臨床薬剤師として10年間の病院勤務を行う中で、患者さんの今の問題だけでなく、将来の不安を和らげる関わり方をしたいとの思いに至り、「心をみたす」を企業理念とした「漢方専門 なつめ薬局/札幌」を開局する。なつめ薬局では、今の症状を取り除くための漢方治療と、将来の不安を取り除く本質的な治療を実践している。漢方相談に関わり始めて以降、27000件を超える漢方相談実績を有し、地元・北海道にてテレビ番組の健康相談コーナーに2年近く出演した経験を持つ。
漢方薬の役割
―――最初にお伺いしたいのですが、不妊治療に漢方薬は効果があるのでしょうか?
妊活を始められている方や、不妊治療を受けようか検討している方にとって、治療と言えば人工授精(AIH)やART(高度生殖医療)と呼ばれる体外授精・胚移植(IVF)、顕微授精(ICSIイクシー)、凍結胚移植等を思い浮かべる方も多いと思います。実際、病院を受診すると様々な検査を行い、段階的に治療高度を上げていく事になります。その流れにおいて各治療と併用する形で、初診から妊娠まで続けて用いられるのが漢方薬になります。漢方の使用目的として、妊娠・出産に適した身体づくりをサポートする点にあります。
漢方専門薬局の漢方薬
―――医師が不妊治療と並行して漢方を処方しているのに、漢方専門薬局に不妊治療の患者さんが訪れるのはどのような理由なのでしょうか。
理由は大きく2つあると考えています。1つは漢方薬の品質、もう一つは選び方の違いがあると考えています。まず、漢方薬の品質についてです。病院の不妊治療で用いられる漢方薬は、そのほとんどが顆粒タイプになります。他にも錠剤タイプやシロップタイプ等を用意するところもあるようです。これらの漢方薬はインスタント漢方と呼ばれる漢方です。管理がしやすく、用意しやすく、持ち運びしやすい、等の便利な面があるので、医薬品業界でシェアを占めています。しかし、残念ながら、これの漢方薬はインスタントになりますので、 漢方薬本来の煎じタイプの漢方薬と比べると有効成分が減っていると言われ、十分な効果が期待できない恐れがあるわけです。もう一つの理由としては、漢方の選び方についてです。 西洋医学では、咳が出るなら咳止め、発熱があるなら解熱剤、下痢をしているなら下痢止め、という具合にお薬が選ばれます。 不妊治療漢方の選び方も同じで、人それぞれ体質が違うのに「不妊治療にはこの漢方を使う」という具合に、患者さんが変わっても同じ漢方薬が使われます。このような漢方薬の選び方は、病名漢方と言いまして、漢方業界では未熟で邪道な選び方と言われています。漢方本来の王道な選び方というのは、目先の病名や症状は大事にしつつも、それに囚われることなく、その人の本質的な状態にアプローチをしていきます。つまり、不妊治療に効果がある漢方薬は人によって違うわけですね。私達のような 漢方専門薬局では、王道な漢方薬の選び方を実践しているわけですね。
- 妊活や自然妊娠を望んでいる方
- 不妊治療の成果をなるべく早く出したい強い気持ちをお持ちの方
- 病院の治療で効果が出ない方
このような方たちが、品質・効果の良い煎じタイプの漢方薬で、王道な漢方治療を望んで 漢方専門薬局に訪れているのだと感じています。
煎じの漢方薬
―――お話しを聞いていると、 病院の漢方よりも品質も効果も良い漢方薬が専門薬局にはあるという事でしょうか。
日本の医療の仕組みとして、 医師の指示で保険適用になるお薬が一番信頼できるというイメージがあると思います。実際、漢方薬も様々な薬局・薬店・ドラックストアをはじめ鍼灸院などでも販売されていますが、そのほとんどは保険適応の漢方薬よりも成分が薄い傾向にありますので、医師の指示による保険適応の漢方薬が一番良い漢方薬だと思う方が居ても仕方がないと思います。ですが、漢方業界としては煎じタイプや原末、丸剤という剤形こそが本来の漢方薬であるというのが定説となっています。つまり、漢方薬に関しては、病院クリニックよりも漢方専門薬局の方が効果の良い漢方が手に入るんですよね。また、煎じタイプは添加物が少ないという特徴もありますので、 自然妊娠を目指す方や、妊活や不妊治療に適した医薬品と言えると思います。
漢方治療の副作用
―――自然妊娠を望まれている方も漢方専門薬局にいらっしゃるようですが、それは漢方薬に副作用が無いという事でしょうか。
漢方薬を作るのに使われる薬草を生薬と言います。生薬は大半が植物ですし、科学的に合成されたものではなく植物そのものを使用します(動物由来の生薬もごく一部にあります)。自然妊娠を望む方にとっては、植物由来の成分でマイルドに体調を整えるイメージがご自身の価値観とマッチしているのかもしれません。漢方薬の副作用についてですが、全くないわけではありません。独特の香りや味がありますので、慣れないうちはお飲みになる前後で抵抗を感じる方もいらっしゃるようです。ですが、病院のお薬のように強い副作用は全体的に少ない事、煎じタイプは顆粒タイプ・錠剤タイプ・シロップタイプ等よりも添加物が少ない事、などを理由に自然派の方や不妊治療の方に選ばれているのかもしれません。
妊活のベストメソッド
―――妊活を始める方や、不妊治療を行っている方に伝えたいことは、どのようなことでしょうか。
妊活・不妊治療について考え始めたら、いきなりARTを実施するよりも、漢方薬を服用してほしいです。ARTは優れた治療ですが、身体と心にかかる負担も少なくありません。まずは漢方薬を服用し身体を整えましょう。結果として、自然に妊娠する可能性も高くなりますし、ARTの結果も出やすくなります。
―――漢方治療を始めるにあたって気をつけることはありますか?
まず気をつけたいのは、漢方治療はなるべく早く始めることです。体質にアプローチしますので、数ヶ月~年単位で時間がかかることがほとんどです。
また、漢方治療なら何でも良いというわけではありません。先程と重複しますが、
- 煎じタイプを自社製造してる事
- あなたに必要な漢方薬を漢方理論に基づいて選んでくれる事
この2点にも気をつけてほしいです。
ARTで使用するホルモン剤に頼りっぱなしだと、妊娠反応が出にくく、出たとしても流産・不育も心配です。一人目を無事に出産できても、その後の体調ケアを怠ると二人目不妊だったり、髪の毛が抜けたり、シワが増えたり、お肌がカサカサになったり老化が加速する恐れもありますので、お子さんを授かった後の未来を見据えて煎じタイプの漢方薬を検討していただきたいですね。
―――そのような理由で病院漢方ではなく、煎じ漢方薬を求めて漢方専門薬局を訪れる人が増えてるのですね。阿部さん、ありがとうございました!
阿部さんの「漢方専門なつめ薬局」は状況把握の聞き取りに多くの時間をかけているため完全予約制になっているそうです。ご相談したい方、煎じ漢方薬の料金の目安を知りたい方は下記ボタンから次のページへどうぞ。