乳がんは女性が患うがんの中で最も大きい割合を占めます。
乳がんには、女性ホルモンである「エストロゲン」の影響を受けてがん細胞が増殖するタイプがあることがわかっています。そのため乳がん治療では、ホルモン療法をしている方も多いと思います。
ホルモン療法の期間は5〜10年といわれています。
強制的に女性ホルモンを止め、がん細胞の増殖を食い止めますが、急に女性ホルモンを抑えることでホットフラッシュなどのつらい更年期症状が現れます。
通常の更年期症状よりもホルモン療法の副作用として起こる更年期症状は重く、ホルモン療法期間中はつらい状態と付き合わなくてはなりません。
つらくてホルモン療法が続けられないという方もいるほどです。
女性の不調には様々な症状があり、複数の不調を抱える人にはそれらをまとめて解決できる漢方治療がおすすめです。乳がん治療中の更年期症状にも漢方薬は効果があります。
漢方治療を併用すると、つらい更年期症状を和らげるだけでなく、免疫力が高まるので再発しにくい体づくりにもつながります。
しかし、乳がん患者でホルモン療法中の方が漢方治療をするには、注意点もあります。
この記事では、乳がん治療によるホットフラッシュなどのつらい更年期症状に漢方薬はなぜ効果的なのか、以下のポイントで解説します。
- ホットフラッシュなどの副作用が現れるホルモン療法とは?
- 更年期症状に対する漢方の効果
- 漢方治療をする乳がん患者に大切な注意点
- 漢方薬で免疫力を回復して再発しない体へ
ホットフラッシュなどの副作用が現れるホルモン療法とは?
乳がんにおけるホルモン療法とは、エストロゲン受容体を持つがん細胞がエストロゲンと結合しないように、エストロゲン受容体をブロックしたり、エストロゲンの産生を抑えたりして、がん細胞の増殖を抑える治療法です。
乳がんの中でエストロゲンを取り込んで増殖するタイプは乳がんの7割ほどを占めています。
検査でホルモン受容体が陽性と認められたタイプには、再発の予防効果が高い治療法です。
エストロゲンは主に卵巣から分泌するホルモンで、女性らしい体を作るはたらきがあり、生殖機能の発育と維持や、肌を美しくしたりするホルモンです。
生殖機能以外にも中枢神経、心臓血管系、脂質代謝を調節するはたらきもあります。
そのためホルモン治療でエストロゲンのはたらきを抑えると、中枢神経、心臓血管系、脂質代謝の調節がうまくできなくなるため、ホットフラッシュ、急な多量の発汗、眠れない、関節痛などの更年期症状が起きてしまいます。
通常の更年期症状では少しずつホルモンが減ることで体に変化が現れますが、ホルモン療法では急激な変化のためより重い症状が起こるのです。
ホットフラッシュや多量の汗は自律神経の乱れで、体温調節がうまくできない状態です。
だるさがあるのに眠れないなど抑鬱状態のような副作用も現れてきます。
これらの症状が辛すぎて、長期に及ぶホルモン療法が継続できないという方もいます。
通常の更年期障害に対するホルモン療法は、減っていく女性ホルモンを補充しながら更年期症状を緩和する治療です。
しかし、乳がんのホルモン療法による更年期症状は、女性ホルモンを抑えて出る副作用なので、別の治療法が必要になります。
更年期症状やがんに対する漢方の効果
漢方では西洋医学のようにホルモン補充療法をすることなく治療ができるので、乳がんのホルモン療法にも併用が可能です。
女性の体はホルモンによって変化し続ける状態にあります。
女性ホルモンの変化によって起きる症状は自律神経系と関連するもの多くあります。
そのような不調を改善するのに漢方は向いています。
東洋医学は症状ではなく体全体をひとつとして捉え、気・血・水のバランスを整えると健康になると考えます。
西洋医学でいう自律神経の乱れは、東洋医学では気の乱れであると考えられています。
またホットフラッシュは、体に必要な潤い(水)が不足しているため、体内にこもった熱を冷ませずにいることで起こっています。
津液には滋潤作用と濡養作用というはたらきがあります。
滋潤作用とは、気が体表部をめぐり皮膚や粘膜に潤いを与え、汗として余分な熱や老廃物を排出したり、涙や鼻水で異物を排出したりするはたらきのことです。
濡養作用は、血の流れに乗り体内の深部をめぐり、臓器に栄養を届けたり、関節内の滑液となり関節をスムーズに動かしたりするはたらきです。
潤いが足りずこれらの作用がはたらかないと、体の熱がますます強くなりホットフラッシュがひどくなる、関節痛を感じるなど更年期症状のさらなる悪化につながります。
そこで漢方では、気の流れを順調にし、潤いを補い、体の乱れたバランスを整えていきます。
漢方における治療は、西洋医学の鎮痛剤や抗炎症剤のように症状を抑えるというものではなく、体の免疫力や自己治癒力を高めることで、不快な症状が治っていくという考えで行われます。
気は目に見えなくとも生命維持に欠かせないエネルギーで、血や水を体内に巡らせる原動力となるものです。
気が不足したり、滞ったりしている状態では、血や水のはたらきにも影響がでます。
更年期症状に様々な症状があるのは、気の不調が血・水にも影響してバランスを崩しているためなのです。
がんも同様に気・血・水のバランスが崩れている状態です。
ストレスが多く緊張状態が長く続くことで気血の流れが悪くなっていたり、水分が滞って不要なものを排出できていなかったりする状態が原因になると考えて、それぞれアプローチします。
気・血・水のバランスが整うと体本来の免疫力がはたらき、がん治療に耐えられる、再発しにくい体になることが期待できます。
漢方治療をする乳がん患者に大切な注意点
乳がんの治療で生じる更年期症状に漢方はよく使われますが、漢方薬の選び方にも注意点があります。
自然の生薬を使った漢方薬には植物エストロゲンを含むものがあります。
エストロゲンの作用があるものは使えないことを忘れないでください。
植物エストロゲンで有名なものが大豆イソフラボンです。
更年期症状に大豆イソフラボンのサプリメントが効果的という広告を見たことがある方もいるかと思います。
乳がん治療中でホルモン療法をしている方の更年期症状には大豆イソフラボンも使えません。
同じような症状が出るとはいっても、通常の更年期障害と乳がん治療のホルモン療法による更年期障害を別物として考えなくてはならないのは、エストロゲンの作用の影響があるからなのです。
生薬にはエストロゲン作用がなくて更年期症状に効果を示すものがあるので、ホルモン療法の副作用を軽減することができます。
また、ホットフラッシュによるのぼせや発汗、その後に続く寒気、どうしようもないイライラなど、自分でコントロールが効かない状態が続き不安になります。
しかし、「漢方薬なら更年期症状が落ち着くかも」、「次回の受診まで待てない」と、ドラッグストアでも手軽に漢方薬を買えるからと言って、症状に合わせた漢方薬を買うのは、ホルモン療法中の方には注意が必要です。
担当医師や専門の薬剤師に必ず相談して、漢方治療を始めましょう。
漢方薬で免疫力を回復して再発しない体へ
乳がんを患ってから生活が一変し、気持ちも体もついていかないけど、とにかく治療をしなくてはと焦る気持ちもあるかと思います。
そのような気持ちがストレスとなることで気は滞り、体内のバランスが乱れることにもつながります。
漢方治療は四診という東洋医学独特の診察方法で細かく聞き取りをして、証(体質)を見極めます。そして根本原因を探り、証に合わせて気・血・水のバランスを整える漢方薬を選びます。
気・血・水のバランスが整うと、体が本来もっているはたらきが発揮され、免疫力、体力の回復、痺れなどのつらい症状が緩和され、再発もしにくい体質に改善できることが期待できます。
がん治療は体調が不安定になるので、体調だけでなく精神面も含めた複雑な症状からでも体質を見極められる専門知識をもった医師、薬剤師に相談しましょう。
一回処方されたら、同じものを飲み続けていればよいというわけでもありません。
体の状態の変化に合わせて、最適な漢方薬を処方してくれる病院や薬局を選ぶこともおすすめします。
近くにそのような薬局がない、体調が悪く外出もままならない、そんな状況でなかなか相談に踏み出せない場合は、私たち漢方専門なつめ薬局にご相談下さい。遠隔相談(電話・LINE・zoom)も可能です。
なつめ薬局では遠隔相談でもじっくり時間をかけて証を見極め、厳選した生薬を煎じた漢方薬を提供しています。
1回分ずつのパック詰めになっているので、煎じる手間なく服用できるので、体調がつらい時でも続けやすい漢方薬になっています。
コントロールできない更年期症状に振り回され、治療中だからと無理に耐え続けることはありません。
漢方で体質を改善して、つらい更年期症状を乗り越える方法を一緒に探してみませんか。