原点は、病院薬剤師として患者さんと向き合った経験
私は薬剤師になって最初に、病院薬剤師として働きました。
病棟ではベッドサイドを回り、入院患者さんに対して、治療で使われている点滴や注射、飲み薬などについて説明し、薬物療法を理解していただく仕事をしていました。
同時に、医師から薬の選択について相談を受けたり、看護師に薬を投与した際に起こり得る反応や注意点を説明したりと、医療チームの中で薬の専門家として治療に関わっていました。
糖尿病患者さんに病気への理解を深めてもらうための講座を行ったり、院内のNST(栄養サポートチーム)の立ち上げと運営に関わった経験もあります。
振り返ると、患者さん、医師、看護師、その他の医療スタッフからも信頼していただき、私自身も病院薬剤師という仕事に誇りを持って働いていました。
当時から漢方薬にも興味を持っており、患者さんの状態を見ながら医師に漢方薬を提案し、実際の処方につなげてもらうこともありました。
患者さんが本当に望んでいるものは何だろう
病院で経験を積み、さまざまな患者さんと接していく中で、少しずつ気づいたことがあります。
患者さんは、今ある痛みや苦しさから解放されるために治療を受けています。
一方で、その奥には、
「これからの人生はどうなるんだろう」
「いつまで元気に過ごせるんだろう」
「残りの人生を、周りに迷惑をかけずに暮らしていけるだろうか」
といった不安を抱えている方がたくさんいました。
その不安の裏側には、
「これからも自分らしく、活き活きと暮らしていきたい」
という思いがあります。
ただ、病院という場所は基本的に「病気を治療する場所」です。
検査をして、診断をして、その病気に対して医学的に適切な治療を行う。
もちろん、それは医療として必要なことです。
ただ、患者さんが「これからどんな人生を送りたいのか」「何を不安に感じているのか」「どのように元気になりたいのか」というところまで聞き取って、治療に反映させる機会は多くありませんでした。
医療側から適切と考える治療を提示し、患者さんに理解してもらう。
私には、ときに「治療を一緒に選ぶ」というよりも、「この治療を受けてもらうために説明する」という形に感じることもありました。
病気を治す、その先まで関わりたい
そうした経験を重ねる中で、
「今の症状を改善することはもちろん、その先の人生を豊かに過ごせるように関わりたい」
と考えるようになりました。
そして、今出ている症状を抑えることに加えて、身体そのものを見直していくような、本質的な改善の考え方があることを知ってもらいたい。
それを日々の生活の中で実践してもらいたい。
そんな思いが強くなり、病院を退職しました。
その後、漢方薬局での修業を経て、2010年に札幌で「漢方専門 なつめ薬局」を開業しました。
効果を考えた結果、煎じ漢方薬を自社製造する形を選んだ
「漢方専門 なつめ薬局」では、提供する漢方薬をすべて自社で製造しています。
制度上は「薬局製剤」と呼ばれる仕組みですが、一般の方には分かりやすく「自社製造」と表現しています。
一般に使われている漢方薬の多くは、エキス剤と呼ばれる顆粒や粉、錠剤です。
なつめ薬局では、煎じて服用する「煎じ漢方薬」を中心に提供しています。
理由はとてもシンプルです。
患者さんの症状を改善するために、自分たちが良いと考える漢方薬を提供したいからです。
そのため、日本の医薬品基準を満たした生薬を厳選して仕入れ、適切に保管し、薬局内で漢方薬を製造しています。
生薬は、仕入れれば終わりというものではありません。
品質を見極め、状態を管理し、適切に保管し、一つひとつ製造していくためには、専門的な知識と経験、細かな管理、そして相応の手間が必要です。
効率だけを考えれば、もっと簡単な方法もあります。
それでも自社製造を続けているのは、自分たちが納得できる漢方薬を患者さんに届けたいと考えているからです。
身体だけでなく、心や生き方にも漢方の考え方を活かす
なつめ薬局で取り組んでいるのは、漢方薬をお渡しすることだけではありません。
漢方には、身体の状態を見る理論とともに、自然や人間のあり方を捉える哲学があります。
私はその考え方をもとに、患者さんの身体の状態だけでなく、生活習慣や心の持ち方についても話をします。
身体に不調があると、
「このまま治らないのではないか」
「これからもっと悪くなるのではないか」
「将来、自分はどうなってしまうのだろう」
と不安になる方も少なくありません。
身体の状態を理解し、今できることが分かり、少しずつ変化を実感できるようになると、そうした不安の中にも希望が生まれてきます。
病院時代に感じた、
「患者さんの今の症状だけでなく、その先の人生にも関わりたい」
という思いは、現在のなつめ薬局の考え方にもつながっています。
なつめ薬局で実践してきたものを「ハルモニア漢方セオリー」へ
現在、この「なつめ薬局」で実践してきた考え方や仕組みを、より広く届けるために進めているのが「ハルモニア漢方セオリー」です。
「ハルモニア」には「調和」という意味を込めています。
私が考えているのは、一方だけが利益を得る仕組みではありません。
患者さんは、身体の状態が改善し、これからの人生をより豊かに過ごせるようになる。
ハルモニアに関わるパートナーは、患者さんに喜んでもらい、感謝され、その仕事に対する報酬を得る。
私たちは、その活動を漢方の知識や仕組みの面から支援し、私たち自身も事業として報酬を得る。
患者さん、パートナー、私たち。
それぞれが役割を果たし、それぞれが価値を受け取り、三者の間に無理のない調和が生まれる。
そんな仕組みにしたいと考え、「ハルモニア」という名前を使っています。
「セヴェナル」に込めた、7つの事業構想
なつめ薬局を運営している会社が、株式会社セヴェナルです。
「セヴェナル(Sevenall)」は、私が作った造語です。
「seven」と「all」を組み合わせています。
会社を作ったときから、
「7つの事業を立ち上げ、そのすべてを軌道に乗せたい」
という構想を持っていました。
そして7つの事業がそれぞれ独立するのではなく、互いに補い合いながら全体として調和する。
その事業を通して、
顧客が満たされる。
スタッフが満たされる。
取引先が満たされる。
そして、経営する私自身も満たされる。
そんな会社を作りたいという思いを「Seven+all」という言葉に込めました。
これまで株式会社セヴェナルでは、「漢方専門 なつめ薬局」を中心に事業を行ってきました。
これからは、ここに「ハルモニア」と「マーケティング」の事業を加え、まず3つの事業へ広げていく予定です。
漢方だけにこだわるのではなく、医療、介護、生活、健康を複数の事業から支えることができれば、セヴェナルという会社を作ったときに思い描いた「7つの事業の調和」に近づいていくと考えています。
これまでの歩み
2010年
「漢方専門 なつめ薬局」を札幌に開業。
2015年
法人化し、「株式会社セヴェナル」を設立。
2026年現在
漢方薬局事業を基盤に、「ハルモニア漢方セオリー」とマーケティング事業の立ち上げを進めています。
27,000件を超える漢方相談と、テレビ出演の経験
現在に至るまで、漢方相談にも数多く携わってきました。
なつめ薬局を開業してからの相談に加え、開業前に別の漢方薬局で修業していた時代から数えると、これまでに携わった漢方相談は27,000件を超えます。
一人ひとり症状も違えば、生活環境も、考え方も、人生も違います。
そうした多くの方と向き合ってきた経験は、現在の漢方相談や事業づくりの土台になっています。
また、なつめ薬局を開業する以前には、北海道の札幌テレビ放送(STV)の番組に約2年間、週1回のペースで出演していました。
人に何かを伝えるという経験も、振り返れば現在の仕事につながっています。
専門的な内容を、専門家だけが理解できる言葉で話すのではなく、一般の方にも分かるように伝える。
そして知識を伝えるだけで終わらず、その人が実際に何かを考えたり、行動したりするきっかけを作る。
病院薬剤師、漢方薬局での修業、テレビ出演、なつめ薬局の経営。
一見すると別々に見える経験ですが、今振り返ると、そのすべてが現在の仕事につながっているように感じています。
私が目指していること
私が目指しているのは、単に漢方薬を販売することでも、会社を大きくすることでもありません。
身体の調子が整うことで、患者さんがこれからの人生に希望を持てるようになる。
仕事を通して人に喜んでもらい、そこで働く人も報われる。
企業として利益を生み、その利益を使って、さらに新しい価値を生み出していく。
そして、それぞれの事業が互いに支え合いながら調和していく。
病院薬剤師として患者さんのベッドサイドに立っていた頃に感じた、
「この人の病気だけではなく、この先の人生にも関わることはできないだろうか」
という思い。
そこから始まったものが、「漢方専門 なつめ薬局」であり、「ハルモニア」であり、「セヴェナル」という会社の構想につながっています。
まだ実現できていないこともたくさんあります。
それでも、患者さん、働く人、関わってくれる人、そして私自身が、それぞれに心が満たされる事業を作っていきたい。
それが、私がこれまで仕事をしてきた中で見つけた、事業を続けていく理由です。
